高度化する“監視”の目 「顔認証」が叩かれるワケ:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
どんどん進歩する「顔認証」技術。犯罪捜査などで役立っている一方、人権侵害や乱用の懸念も広がっている。今、世界でどんな議論が起きているのか。そして、私たちは顔認証技術の拡散をどう捉えていくべきか。
知らぬ間にテクノロジーが飛躍的に進化していることに、ふと気が付くことがある。
筆者の場合は、タッチスクリーンだった。反応が鈍く感度も悪いというイメージだったタッチスクリーンは、気が付けばスマートフォンで実装され、初めてiPhoneで使った際にはそれまでのタッチスクリーンのクオリティーを完全に覆すもので大変驚いた記憶がある。
おそらく人それぞれ、そんな瞬間を経験したことがあるだろう。そして最近、また似たような感覚になっているテクノロジーがある。いつの間にかとんでもなく進化していて、欧米のニュースなどで頻繁に目にするようになっている。
「顔認証」技術である。
ただこの顔認証が今、国外でいろいろと物議を醸している。特に話題になっているのが、7月7日に米ワシントンポスト紙が報じたニュースだ。同記事によれば、FBI(米連邦捜査局)が捜査の顔認証に使うために、運転免許証のデータベースにある顔写真を無断で使い、スクリーングしていたことが明らかにされた。しかも犯罪を起こしたことがないような運転免許保持者の写真も、本人に何も知らせることなく、勝手に使っていたのである。このニュースでFBIは批判にさらされている。
この例のように、これから5G(第5世代移動通信システム)などによって監視カメラなどIoTが爆発的に普及すると見られている中で、それに比例して顔認証もさらにクオリティーを高めながら、知らぬ間に広く使われることになる可能性がある。ワシントンポストの記事のようなケースを踏まえ、顔認証テクノロジーがなぜ議論になっているのか、また、私たちはこの技術の拡散をどう捉えるべきなのか探ってみたい。
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