2. 採用後に自分たちのカルチャーを考える機会を作る
こちらも各社さまざまな取り組みをしている。
- 「チーフカルチャーオフィサー」の任命による、全社を挙げてのカルチャー推進(コンカー)
- 「Bestカルチャー賞」の表彰(ケンブリッジ)
- 月1の全員会議でカルチャーを考えるコーナーを設けて議論する「カルチャーコーナー」の実施(ケンブリッジ)
- 全員でカルチャーを見直す&イラストを付ける(freee)
- 年間MVP受賞者の本気フィギュア作成(freee)
こんなふうに、各社それぞれの施策で、カルチャーを浸透させようとしている。
中でも印象的だったのは、freeeの取り組みだった。freeeは、「真面目にふざける(アソビゴロ)」というカルチャーを大事にしていて、あちこちで“真面目にふざけていた”。
例えば、その年のMVPに、その人そっくりのフィギュアを作ってプレゼントするという。それを見た年次の浅い社員たちは、「これが“真面目にふざける”ってことか、いいなー」と思うに違いない。「カルチャーが共感された状態」を作るとは、こういうことなのろう。
カルチャーを軽視した、ケンブリッジの失敗
ちなみにケンブリッジでは、日本法人が立ち上がって間もない頃、カルチャーを全く重視せずに人を採用した時期があったが、その結果は最悪だった。組織は分裂し、派閥ができ、解体寸前まで追い込まれた。
その時の強烈な反省があり、カルチャーを重視した採用を続けている。社員たちの価値観がズレると、やはりうまくいかないからだ。
ケンブリッジはこうした強烈な失敗体験があるから、いくらスキルが高くても、カルチャーがフィットしなければ採用しない。目標の採用数に到達しなくても、絶対にカルチャーで妥協はしない。人の能力は伸びるし変わりもするが、価値観はそう簡単に変わらない。だから、採用でカルチャーを大事にするのはとても重要なのだ。
他の4社はケンブリッジのような大失敗の体験はないのだろうけれど、結果的にやっていることが共通しているのは本当に面白い。
「カルチャーを示し、社員がそれを『当然だよね』と思う環境を保つ」というのは、「働きがいを高める」ための本質なのだろうと思う。
あなたの会社はどうだろう?
さて、あなたの会社ではどうだろう? どんな状態で、何が不足しているだろうか?
自社の状況を客観的に見つめるために、自問自答リストを作ってみた。考えるきっかけになれば幸いだ。
- Q: 大事にすべき企業カルチャーは明確になっていますか?
- Q: そのカルチャーは単なるスローガンになっていませんか?
- Q: カルチャーフィットを重視して採用していますか?
- Q: 社員がカルチャーを意識する機会はありますか?
- Q: カルチャーを「いいよね!」と社員が思える機会がありますか?
著者プロフィール:榊巻亮
コンサルティング会社、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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