吉本興業がテレビ業界から干される日:専門家のイロメガネ(6/7 ページ)
不祥事で謝罪会見を行えば、ある程度、トラブルは鎮静化するものだが、「グダグダ」「意味不明」と批判された会見によってさらに報道はヒートアップ。今後の吉本は、テレビ局各局から「干される」可能性すらある。そしてその動きはすでに表面化している。
吉本騒動で、初の解雇者発生か?
最後に、現在の吉本報道の中でほとんど注目されていないが、テレビ局からの追及と並んで吉本を追い込むような深刻な問題が発生している。無期限謹慎中の芸人、2700のツネ氏が勤務先の不動産会社を解雇されたという話だ。
同社は、すでに6月末にはツネ氏を解雇した旨を自社Webページで正式に報告している。「解雇」と表現している以上、業務委託や外注ではなく「雇用契約」を解除したことは間違いない。
雇用契約は正規・非正規を問わず、労働者保護の観点から簡単には解除できない。なぜツネ氏は解雇されたのか。同社の説明では「闇営業による反社会的勢力との関わり、そして金銭の授受が発覚した」ため解雇したと説明されているが、それ以上の詳細は不明だ。
ツネ氏にとっては副業ではあっても、多い時には週5日勤務で、芸人の収入より不動産会社からの収入が多い時もあると過去にテレビ番組で発言している。
吉本所属のタレント、ホンコン氏は、不動産会社が解雇した理由は「雇用を続けると銀行からお金を借りられなくなるからだ」とツネ氏本人から聞いたという(関西テレビ お笑いワイドショー マルコポロリ! 2019年07月28)。
ツネ氏が入社する際の雇用契約書では、反社条項といって反社会的勢力との関わりに厳しいルールが求められていたはずだ。反社条項(あるいは暴排条項)は、ざっくり説明すれば暴力団や反社会的勢力(詐欺集団や暴力団の支配する企業で働く者など)に所属する、あるいは関わりがある場合に適用される(いずれも契約内容次第)。ツネ氏の場合は暴力団のパーティーに参加したことが明確であるため、おそらく反社条項が適用されて解雇されたのではないかと思われる。
これは不動産会社の会社の言い分をツネ氏がホンコン氏へ伝えて、それがテレビで語られたため又聞きのさらに又聞きだ。ただ、金融・不動産系の企業は特に反社会的勢力に対して厳しい対応を求められているため、話の内容として違和感はない。
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