大前研一が息子たちに施した「21世紀型教育」とは?――「先生の言うことを聞くのよ」と言ってはいけない:大前研一大いに吠える!【後編】(6/6 ページ)
大前研一が勉強しない日本人について大いに吠える!
子育ては対話が重要
もう一つ、質問を受けましょう。
女性: お話ありがとうございました。私自身、2歳の息子がいまして、シンギュラリティのときに25歳くらいになります。いま言葉を喋り始めたくらいの子ですけど、どうすればこの世界をサバイブできるのだろうかと考えたりしています。もしも大前さんにいま2歳の子供がいた場合、どのように育てるのか教えていただけますか。
大前: 他人の子育てに口を挟むほど、私はばかじゃないからね(笑)。私は自分の子どもに関して、本を2冊書いています。『親が反対しても、子供はやる』と、『大前家の子育て』です。
息子が2人いますが、親の言うことに全部反対して、学校は入学したところをやめました。長男は大学を中退。次男は大学まで用意されている早稲田の付属中学に入ったのに、プログラミングの勉強をして付属高校には進学せず、アメリカの高校に留学しました。その後アメリカの大学に進学しましたが「レベルが低い」と言ってやめました。非常に優れた21世紀型の教育ができたと思います(笑)。
私は子どもに対して4つの責任を教えました。社会に対する責任、社会人になって自分で稼ぐようになったら会社に対する責任、ソサエティーやコミュニティーに対する責任、それに家族がいたら子どもに対する責任です。
この4つの責任感があれば、学校に行こうが行くまいが、何をやっても構わないと子どもたちに言ってきました。4つの責任を暗唱したら好きにしていいよと言ったら、さっさと学校をやめちゃいましたね。
2人ともいまはすごく稼いでいます。長男はWebコンサルティング、次男はソフトウェアの分野で仕事をしています。だからうちの息子たちは、結果的にはドロップアウトしたけれど、だめなことはなかったと思いますよね。
そういう意味では会話があったかどうかが重要だと思っています。やっぱり人間の生き方とか、社会に対する責任とか、そういう教育は親しかできないので、それだけがあればいいんじゃないでしょうか。
日本の子育ては、夫が妻にアウトソースして、妻は家庭教師か塾にアウトソースするじゃないですか。本当の教育を親がしていません。これからの学校は、これまで通りの教育をするという意味で、子どもに危害を加えるものになります。だから親子の間でインテリジェントな会話をすることが、重要になると思います。
母親は、子どもを学校に行かせるときに、「先生の言うことを聞くのよ」と言って送り出したらだめです。先生の言うことを聞いたらろくな奴に育ちませんから(笑)。アウトソースしないということが重要ですね。
もう一つ、母親は「ゲームなんかやっていないで宿題やりなさい」とよく言いますよね。宿題やったってろくなことはないですよ。うちは、子どもがゲームをやっていたら「入れてくれ」と言って一緒に遊んでいました。宿題をするよりもゲームで遊んでいる方が、頭の使い方が発達すると思いますよ。
なぜかというと『ファイナルファンタジー』にしても、ロールプレイングゲームは「この扉をあけたらどうなるか」とか、未知の世界に入っていくじゃないですか。これは21世紀そのものですよ。
いまは親が子どもの加害者になっているということが、非常に多いのではないでしょうか。対話が成り立つがどうかが重要です。それくらいの距離感で子どもと付き合うことをおすすめします。
時間は尽きませんが、これからの時代を生き抜くためにも、リカレント教育で繰り返し繰り返し学ぶことを考えましょう。私もいま知っていることだけで、死ぬまでやっていくのはずうずうしいよ、と自分に言い聞かせながら、学び直していきたいと思います。どうもありがとうございました。
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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