2015年7月27日以前の記事
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月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)

米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。

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賃金を上げるトップが信じる「人の力」

 世界の先進国が最低賃金を上昇させている一つの要因は、貧困の連鎖を絶とうする社会の強い意志です。それは企業のトップの志であり、国が向かう方向でもあります。

 その根底には「人の力」への信頼がある。そうです。人には果てしない可能性があり、その可能性にかける経営者が働く人たちの賃金を上げ、企業の未来を「人」に託した結果です。実際、英ミドルセックス大の研究者らが最低賃金の上昇が始まった1999年から2008年までを分析したところ、同期間で実質の最低賃金が3割上がったのに対し、労働生産性は15%向上し、賃金引き上げが企業の生産性に寄与していることを突き止めています。

 私は講演や取材などで全国津々浦々1000社以上の会社を訪問していますが、「人手不足を解消するために賃金を上げた」と話すトップが多いことに驚かされます。また、人手を求めて社長さんが海外に出向き、専門学校や大学などと連携し、外国人の働き手を増やしている企業の中には、日本人より高い賃金を払っているケースも多数存在します。

 そういったトップが信じるもの。それがまさに「人の力」です。

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「人の力」を信じ、従業員が生き生きと働けるように奮闘するトップもいる(写真提供:ゲッティイメージズ)

 低賃金で、不安定な雇用形態では、労働者のモチベーションが低下し、無責任で意識の低い行動に陥りがち。一方、高賃金で、安定した雇用形態では、労働者の責任感は高まり、自分の技術を磨くために勉強したり、自己投資をしたり、働きがいを感じたりすることができる。

 そういった経営をすることで、働く人たちが「もっと頑張ろう! もっと自分の能力を発揮したい!」「社長さんに喜んでもらいたい!」「会社のためになりたい!」とトップと会社を信じ、能力を拡大させるのです。

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