月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。
働いているのは「人」である
「人の力」を信じるトップは、高い賃金を払うための経営努力を怠りません。ある社長さんはあちこち奔走して新しい仕事を見つけ、ある社長さんは人工知能(AI)に投資して体力が落ちたシニア社員のサポート手段として活用し、ある社長さんはパートの女性たちに裁量権を徹底して持たせることで生産性を向上させていました。
働く人たちの「力」と社長さんの「力」が、いい化学反応を起こし、企業もそこで働く人も豊かになっているのです。
松下電器産業(現パナソニック)を創業した松下幸之助さんは「賃金の適正化」という言葉をよく使っていました。「給与が適切であるか否かは、会社にも従業員にも、その安定と繁栄にかかわる重大な問題」だと。
どうか企業のトップの皆さんには、トップ自ら絶えざる創意と工夫を加えて、賃金の適正化を図ってほしい。働いているのは「人」である、という当たり前に気付いてほしいです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
お知らせ
新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)が発売されました!
2017年発売の『他人をバカにしたがる男たち』で解説した「ジジイの壁」の背景となる「会社員という病」に迫ります。
“ジジイ”の必殺技は「足を引っぱる」こと。公の場で「彼女の発言を補足しますと……」と口を挟んでしまう“面目つぶし”、「私は指示したのですが○○が動かなくて……」と相手を悪者にする“責任逃れ落とし”、他人に関する必要のない情報を上司に伝える“アピつぶし”、そして“学歴落とし”や“悪評流し”――。
不毛な言動に精を出して「ジジイ化」してしまう人たちのジレンマと不安の正体について解説します。
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