スルガ銀と結託 “情弱”狙った「かぼちゃの馬車」運営会社の「詐欺まがいの手口」:あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(3)(4/4 ページ)
成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。
続々と明るみに出た「詐欺まがいの手法」とは
何より深刻な被害が生じたのは、銀行でローンを組んで物件を購入したオーナーたちだ。
オーナーは、サラリーマンが副業としてシェアハウスを購入したケースが多いと見られ、一部報道では1億円を超える融資を受けた会社員も複数いたと報じられた。各オーナーは個別で金融機関と交渉を進めたようだが、スマートデイズからの賃料収入が実質途絶えたことで、個人破産に追い込まれるオーナーが出る可能性も十分、考えられた。
スマートデイズの破産で明らかになったのは、同社のメインバンクであり、物件の買い手への融資を一手に引き受けていたスルガ銀行の、ずさんすぎる貸付実態だ。多額の融資を可能にするために、スマートデイズや販売代理店は、資金の借り手の貯蓄や所得を改ざんしていた。スルガ銀行には融資の審査に問題があっただけでなく、こうした改ざんにも関わっていたと見られた。
そのため、金融庁から実態の解明を命じられ、第三者委員会によって数々の不正融資の実態が発覚すると、役員が引責辞任する事態にまで発展した。さらには、建設業者に建設費用を水増ししてオーナーに請求させ、スマートデイズがキックバックを得るといった悪質な実態も明らかになった。
不動産業界のパイオニア、注目の不動産ベンチャーとして名を馳(は)せたスマートデイズだったが、実際には銀行や販売代理店、建設業者と結託した詐欺まがいの手法で、不当な利益を得る悪徳業者だったのである。オーナーたちには弁護団がつき、18年3月に東京地裁に提訴。しかし争点整理からして時間がかかるありさまで、訴訟は今なお決着しないまま、長引くことも予想される。
事態の完全収束はいつになるか分からないが、スマートデイズが最初から無理のあるビジネスモデルを押し通し、結果的に顧客を欺いたうえに多大な損失を与えた事実は変わらない。その点で大きく道を踏み外した同社の倒産劇は、顧客や金融機関からの信用と信頼が、ビジネスにおいては何よりの命綱となるという当たり前の事実を、改めて重く物語っている。
著者プロフィール
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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