iDeCoの改正で逆に格差は拡大する?:専門家のイロメガネ(2/3 ページ)
私的年金である個人型の確定拠出年金、iDeCoに全ての会社員が加入できるように改正されると報じられました。iDeCoには大きな節税メリットがあるため、一見、会社員にとっては朗報と思えますが、いくつか落とし穴があることには注意が必要です。
制度が拡充されてもメリットが無い人、救われない層
老後の備えは必ずしもiDeCoがベストとはいえないケースもあります。加えて制度が拡充されてもメリットが無い人、救われない層も確実に存在します。今後は消費増税も控え、使えるお金が増えにくくなることを考えると、掛け金の入れすぎがデメリットになる場合があるからです。
社労士として、そしてFPとして活動する筆者が、一般論ではなく具体的なケースから考えてみたいと思います。
iDeCoの税制メリット、特に掛け金が全額所得控除になる点は確かに大きいものです。例えば月2万円、毎年24万円を掛け金として入れたケースだと、支払う税金が年間4万8000円少なくなるほどの効果があります(※所得税10%、住民税10%と仮定)。これほど大きな優遇を受けられる制度はほかにありません。枠があるのなら上限まで活用した方がよいことは間違いありません。
その半面、iDeCoには60歳まで引き出せないという決まりがあるため、良かれと思ってiDeCoに掛け金を入れすぎてしまうと、家を買うときや教育費がかかる時期などに資金繰りが苦しくなり、後悔してしまう可能性もあります。
今回の改正で実質的にメリットがあるのは、以下2点の条件を満たした人といえそうです。
- 勤め先の会社に確定拠出年金の制度があって、企業型の上限5万5000円より毎月の掛け金が少ない
- 貯金をする余裕がある
具体的な例として、「勤務先に確定拠出年金はあるけど、会社が出してくれる毎月の掛け金は6000円だけ。掛け金は少ないのに、会社に制度があるせいでiDeCoに入れない」といったケースです。収入が高めの大企業の社員などが想定されます。
こういった人にとっては朗報で、老後の資産形成がより効率よくできます。ただ、このようなケースに該当する人は加入者数全体の中でも一部でしょう。
上限枠の問題ではなく、家計に余裕のないことが問題であれば、改正をしてもうまく活用することはできません。
iDeCoが向かない層
iDeCoという制度をうまく活用できるかどうかの分岐点は、ライフプランと現役時代の資金繰りにあります。老後資金を貯めようとするあまりに家賃や住宅ローンを滞納したり、カードローンを利用して返済に苦しむような家計では、逆にiDeCoが足かせになってしまう可能性もあります。
といっても、家計の状態把握は、容易ではありません。老後どのくらい資金が不足するか? そして現役時代はどのくらいお金が必要か? という長い人生スパンでの資金繰りを考慮しなくてはいけません。
今は定期預金の金利も0.01%程度と預けていてもまったく増えないような水準です。そのためリスク資産での運用を考えたくなりますが、貯蓄が少なく今後の資金繰りに不安がある層には、iDeCoはあまり向いていません。
老後の資産形成を支援するための税制優遇策は、iDeCo以外にも選択肢があります。例えば、いつでも解約できるつみたてNISAです。つみたてNISAは、つみたてた掛け金の所得控除は受けられないものの、運用益には課税されず、iDeCoと同じように毎月コツコツと積立投資ができるうえに、いつでも解約して資金を引き出せるという特徴があるからです。
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