iDeCoの改正で逆に格差は拡大する?:専門家のイロメガネ(3/3 ページ)
私的年金である個人型の確定拠出年金、iDeCoに全ての会社員が加入できるように改正されると報じられました。iDeCoには大きな節税メリットがあるため、一見、会社員にとっては朗報と思えますが、いくつか落とし穴があることには注意が必要です。
改正に取り残される
2017年の家計の金融行動に関する世論調査(金融広報中央委員会)によると、貯蓄がゼロの世帯は31.2%にも上ります。手取りの収入が増えず、老後の備えまでお金がまわらない人や、老後まで資金を固定するリスクを感じる人も多いのではないでしょうか。
特に収入が低くてそもそも貯金するだけの余裕がない人にとって、iDeCoの拡大はほぼ無関係です。現在はパート、アルバイトなど非正規雇用者の厚生年金加入も進んでいますが、ギリギリの生活を送る人に、資産運用で老後の備えをしましょうというのは無理な話です。このようなケースでは、不足分を資産運用や貯蓄だけで賄う提案は現実的ではありません。長期的な収支を見ながら、支出を減らし収入を増やす方法を考える、病気や要介護にならず長く働けるように健康に配慮するなど、実現できる方法をライフプランとして立てていく事になります。
自助を税制で後押しする、という流れは今後も続くと思われます。これはiDeCoのような仕組みをしっかり利用できるかどうか、という部分で格差が生まれる事も意味します。資金繰りに不安があり、iDeCoに掛け金を入れる事が難しい層の資産形成の道すじが不透明なままだとしたら、格差はさらに広がってしまいます。
年金が極端に少ない人が老後を迎え、貯金を使い切ってサポートする親族もいなければ結果的に生活保護の受給者となり、国民全体の負担が増えます。現在の生活保護受給者の半数がすでに高齢者で、今後も増えることが予想されます。非常に悩ましい課題ですが、避けて通る事のできない問題として併せて考えていく必要があるでしょう。
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