「残業は美学」「暑い、暗い、狭い」 厚労省のブラックな職場環境が明らかに:働き方改革の”本丸”が周回遅れの実態(2/2 ページ)
厚労省若手チームが「緊急提言」を発表した。職員らの意見には「厚労省は人生の墓場」など衝撃的な声も目立った。民間企業で働き方改革が浸透する中で、周回遅れの実態が明らかに。
「メールは失礼」民間企業以上の課題が明らかに
では、今回の提言でどういった課題が明かされたのだろうか。中身を見てみると、民間企業では既に解決が進んでいるような課題も目立つ。
例えば、「デジタル化」だ。民間企業の多くは、クラウドサービスやスケジューラーの活用などが浸透してきている。しかし、いまだに厚労省では出勤簿が紙ベースで管理されていたり、幹部の予定が毎日手書きの予定表でまとめられていたりと、デジタル化でなくすことのできる業務が多い。これを、勤怠管理システムの改修やスケジューラーの活用によって省人化する提言を行った
また、省内コミュニケーション活発化の必要性にも言及した。かつて「メールは失礼」とされていたが、現在は普及していることを引き合いに出し、電話やメールでの連絡ではなく、チャットなどを活用することで、効率アップの必要性を訴えた。
さらに、「残業時間の長さ」も課題に挙がった。国会で開催される各委員会では、議員が「質問の通告」を行い、それに対する回答を委員会までに官僚が作成する。したがって、通告がなされるまで、業務を行うことができない。中には、委員会前日の午後9時に通告をする議員もおり、そうなると実際の作業はそれ以降に行うので、深夜まで業務が終わらず、帰れないことになる。これに対しては、議員ごとの通告時間をまとめ、必要に応じて公表できる仕組みを取ることを提言した。
ワンオペ、ハラスメント、熱中症……まだまだ山積する課題
飲食業で問題となった「ワンオペ」も、厚労省では問題となっている。ポストに1人しかいない「独任ポスト」では、突発的な案件にも1人で対応しなければならず、働き過ぎの温床となっていることを問題視。今後は独任ポストを廃止し、複数人で対応することで、分担を推し進める提案がなされた。
また、調査を受けた人のうち46%が、ハラスメントを受けたことが「ある」と回答。さらには、ハラスメントを受けたことのある人のうち過半数が「相談先がわからない」「相談しづらい」「人事上の不利益等を考慮して相談せず」という回答をしている。これに対しては、相談窓口の周知などで対応することを提案。
生産性を低下させる劣悪なオフィス環境も明かされた。ある職員のデスクで気温を計測したところ、32.8度を記録したり、廊下の明るさが6ルクス(ろうそくの炎が10ルクスとされる)であったりと、環境が働きやすさを阻害しているとした。こうした「拘牢省」と呼ばれる環境を改善するために、他省庁を参考にしたフリーアドレス制やオープンスペースの導入で、オフィス改革を目指す。
「人手不足」のモデルケースとなるか
厚労省が抱えるのは、「圧倒的な人員不足」から生まれる業務負荷の増大、そしてそのことが呼び込むミスや不祥事の発生、さらにはそこからまた業務量が増えモチベーションが減退し、離職や休職の増加となり、人員不足が発生する……という負のスパイラルだ。この問題は「人手不足」が叫ばれる現代日本社会の構造的な問題とも言える。
今回のスライドの末尾では、「工程表」が示され、21年度までに「生産性」「人事」「オフィス」の改革を目指すとしている。厚労省では、10年にも若手プロジェクトチームによる省内改革のプロジェクトが行われた。しかし、今回の緊急提言の中身を見てみると、改革はなされていなかったのが現状と言える。厚労省は今回の改革案を計画通り実行し、日本社会の新たなモデルケースとなり得るだろうか。
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