消費増税後、「スーパー業界の勝ち組像」はどう変化する?:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
実施まで1カ月を切った消費増税――。過去の増税時にスーパー業界では何が起こったのかを振り返りつつ、今後も生き残るためのポイントを探った。
オーケー、ヤオコーの比較から見えること
主要スーパーの売り上げを見ると、高品質鮮度重視のヤオコーと、ディスカウントのオーケーという、イメージでは対極にある食品スーパーが上位に並んでいるのが興味深い。鮮度のよい生鮮品、おいしい総菜の品ぞろえで消費者の支持を得ているヤオコーと、コスパNO1の評価を受けるオーケーの両社は、日本生産性本部の顧客満足度調査(スーパーマーケット部門)でも、1位がオーケー、3位がヤオコーというポジションにある(2位はコストコ)。顧客からの評価が高いオーケーとヤオコーが、実際にも売上を伸ばしているという結果となった。
図表2は上場食品スーパーの主な経営指標で、上位5社を抽出したものになる(オーケーは上場していないものの、有価証券報告書などでさまざまな情報を開示している)。この経営指標のうち、業界特有のものだけを注釈しておくと、(1)既存店売上増減率≒店舗の集客力トレンドで高いほど強い、(2)在庫回転率≒数値が高いほど商品が売れて新しいものと入れ替わっていることで、商品の鮮度とも密接な関係がある、(3)売場1?あたり売上≒店舗面積あたりの売上、数値が高いほど繁盛していることを示す、といった指標である。
一目瞭然ではあるが、オーケー、ヤオコーの両社は、主要な経営指標でも業界でトップクラスであり、顧客の支持があり繁盛していることで、結果として最も儲(もう)かっている企業だということが示されている。ここ数年の両社の成長は、その実力によって裏付けられていることが、よく分かる。
では両雄相まみえればどうなるのか――。興味は湧くと思うが、意外にも、この両社が、直接対決をしている場面は、実はあまりない。両社の展開するエリアは、オーケーの言葉を借りれば、「国道16号線の内側を当面の出店予定地域と定めております」とのことであり、主に神奈川県東部から東京都南西部に展開している。一方ヤオコーは埼玉県を中心に、主に国道16号線の北側に展開しているため、ちょうどすみ分けているような状態となっている。
こうした店舗展開から考えると、国道16号線の外側では鮮度が良い生鮮とおいしい総菜、内側ではコストパフォーマンスが、最も差別化要因となったともいえる。都市部でのディスカウント型の成長、郊外部での鮮度強化型の成長といった構図は、当面続くのではないだろうか。
関連記事
- 中国人の間で日本の「のり弁」が話題沸騰 SNS分析でその「意外な真相」を追う
中国人向けSNSで日本の「のり弁当」の投稿数が急増している。背景には日本人の知らない「不思議な事情」が。SNSと中国市場の分析から迫る。 - 結婚式場のメルパルク炎上に見る、日本企業特有の「根深い欠陥」とは
結婚式場の口コミを巡りメルパルクが炎上している。同社は声明を出したものの逆効果に。筆者は背景に「日本企業特有」の欠陥を見る。 - 店舗消滅! 「駅前の光景」が“荒廃”するこれだけの理由
銀行や飲食店が集まる駅前の見慣れた光景が急変しつつある。リアル店舗の消滅によるものだが、その原因とは……? - アパレル、ウエディング……「キラキラ系業界の接客女子」が転職に行き詰るワナとは
アパレルやウエディングなど華やかな接客業は女性に人気。しかし、離職率が高い上に異業種へ転職しにくい傾向も。構造的なキャリアの断絶問題を解き明かす。 - 「バイトテロ」が繰り返される真の理由 大戸屋一斉休業で問う
3月12日に大戸屋が一斉休業するなど社会問題化する「バイトテロ」。そのメカニズムと真の対応策について専門家に聞いた。 - メルカリが電子決済の覇権を握る日
メルカリは中古品流通業界を制するといった小さなことを目指していない。彼らが握ろうとしているのは今後キーになる「電子決済の覇権」なのだ――。 - 「マツキヨ・ココカラ連合」誕生が意味するもの
ドラッグストア大手マツモトキヨシとココカラファインの資本業務提携が意味するものとは――。 - 「24時間からの撤退」を突き付けられたコンビニ本部の“生存戦略”
コンビニ本部と加盟店が対立し、クローズアップされる24時間営業の是非。今、コンビニ本場が取るべき「生存戦略」とは――。 - 「セブン24時間見直し」の衝撃――ローソン竹増社長に問う“コンビニの持続可能性”
コンビニの24時間営業の是非が取り沙汰される中、ローソンの竹増貞信社長が3月7日、ITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じた。 - コンビニオーナー残酷物語 働き方改革のカギは「京都」にあり
「働き方改革」の時流に逆らうかのように「24時間営業」を止めないコンビニ。その裏では、オーナーに「過労死ライン」の労働を強いている実態がある。そんな中、24時間を止めても純利益を8%増やした京都のオーナーが、メディアの取材に初めて実名で応じた。 - ローソンが「24時間営業の見直し」を検討する理由
ローソンの竹増社長が24時間営業について変更検討を示唆。「社会のニーズがないのであれば変化に対応しなければならない」と話した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.