アクセスしたら乗っ取られる? 香港デモ“妨害”の中国サイバー攻撃「巧妙な手口」:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
「逃亡犯条例」改正案をきっかけとした香港の抗議活動が続いている。デモ隊が使うメッセージングアプリを中国当局がサイバー攻撃したことも判明。こういった中国の手口には、私たちも無関係ではない。国をまたいだデジタル戦に注意しておく必要がある。
全人口2200万人中1500万人のデータが盗まれた台湾
そもそも中国は、香港に激しいサイバー攻撃をしてきた前科がいくつもある。特に、反体制派の口封じの側面が大きい。2014年には香港で大規模デモ活動「雨傘革命」が行われたが、その際にも、さまざまなサイバー攻撃で参加者を妨害しようとした。15年には、百度で使われているトラフィックをハイジャックし、中国国内でサービスがブロックされているGoogleやニューヨークタイムズ紙などがDDos攻撃の標的になっている。
もちろん香港と並んで、中央政府と距離を置いている台湾も例外ではない。一例を挙げると、10年には、人口2200万人の台湾で1500万人もの個人データが中国政府のハッキングによって盗まれている。
こうしたケースから分かるのは、中国は敵対する勢力には容赦なくサイバー攻撃を行うことである。敵とみれば、民間企業だって狙うだろう。中国のサイバー攻撃の特徴として、ばれないように時間をかけて知的財産も狙うことで知られているため、ビジネスパーソン個人へのサイバー攻撃から、所属する企業や取引先企業のネットワークへも侵入しようとする。ここまで見てきたようなDDos攻撃やハッキング攻撃なども、明日にでもあなたの身に起きてもおかしくない。もっとも、ハッキングされて乗っ取られていることに気が付いていないケースも多いだろうが。
とにかく、サイバー攻撃対策も、現代のビジネスパーソンにとって常識だと考えていい。かつて取材したサイバー担当の内閣参与の中に「日本には仮想敵国はいない!」と言った人がいたが、中国だけでなく、ロシアや北朝鮮からの攻撃も気に留めておく必要があるだろう。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最新刊は『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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