「もっと社員を大事に」 年収査定サービスから見えたベンチャー企業の報酬事情:開始から1カ月
キープレイヤーズが8月2日から年収査定サービスを行っている。企業から提出された職務経歴書などをもとに査定を行う。サービス開始から1カ月が経過した今、反響や企業の報酬状況を聞いてみた。
人材サービス会社のキープレイヤーズ(東京都港区)が8月2日から、法人向けに「年収査定サービス」を提供している。
同サービスでは、企業が対象者の職務経歴書などを提出。同水準のステータスを持つ人の市場価値等と合わせて、その給料がどれくらい高いのか、あるいは安いのかを査定する。定期昇給や雇い入れの際などに使われることを想定。また、査定後は年収に関する相談なども受けるという。サービス開始から1カ月ほどが経過した今、サービスの背景などを聞いてみた。
キープレイヤーズ代表の高野氏は、採用活動などのコンサルティングを行っている。数十社ある顧問先からの問い合わせは、給与や評価制度に関するものが多いという。なぜかというと、「給与や評価制度には確固たる概念がない」からだといい、従業員の給与だけでなく、中には社長の報酬に関する相談もある。今まではコンサルティング業務の一環としてこうした相談を受けてきたが、別個のコンテンツとして切り分けてもニーズがあるのではないかと考え、サービス提供に至った。
しかし、サービス提供から1カ月が経過した今、期待していたほどの引き合いはないとのこと。「日本人はやはり給料のことについてはなかなか口に出さない」と高野氏は話す。「まだまだ企業では情報の開示にハードルが高い」とし、今後どのようにサービスのハードルを下げていけるのかが課題だとした。最近では、必要な情報が全部提出されなくても査定に応じることも始めているという。
ほとんどが「給料が低いのでは?」
査定サービスを受けた企業のほとんどは、「この人の給料は安すぎるのではないか」という点を懸念している。転職サイトなどで口コミが見られるようになり、インターネット上で人材の市場価値が分かるようになったことが背景にある。「昔は隠せていた」(高野氏)ことが明るみに出ることで、従業員の中に不満を抱える人も多くなっているという。「中には、市場価値から100万円以上も年収が低い人もいる」ことも明らかになった。
こうした現状に、同氏は「今いる社員をもっと大事にしてほしい」と訴える。キープレイヤーズのクライアントにはベンチャー企業が多い。ベンチャー企業では採用や人事が経営に与えるインパクトも大きい。「適正な報酬を支払わないことで退職者が出て、新規採用の必要が生じた場合、市場価値に合った報酬を支払っていた場合以上のコストがかかってしまうこともある」という。また高野氏は「日本は従業員を解雇しづらいため、『採用に失敗したらどうしよう』と考え、採用時の報酬を低く設定する傾向にある。また、パフォーマンスが出ていない従業員に対して報酬を下げることもなかなかやらない。従業員を大事にしつつも、こうした点の流動性を上げることが課題だ」と話した。
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