「公的年金なんて無意味」とうそぶく若者が将来確実に年金にすがる理由:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
若者から期待されていない公的年金。しかし著者は「20年後に今の若者も年金頼りになる」と指摘する。昔から繰り返されていた「年金絶望論」の真実とは?
年金2000万円問題によって、公的年金に対する信頼がこれまで以上に揺らいでいる。年金財政の状況を考えると、現時点との比較で2〜3割の減額は必至であり、若い人にとっては、何の期待も持てない制度になっているのはよく理解できる。
だが、年金がアテにならないという話は、過去、何度も話題になったことがあり、(当時の)若年層は「自分たちはどうせ年金はもらえないので、保険料などを払いたくない」と強く主張していた。しかし、彼等が中高年になった今、自分はいくら年金がもらえるのかと血眼になっている。今、「公的年金など意味がない」と主張している若い人の大半が、20年後には「年金、年金」と騒いでいるはずだ。
公的年金は減額が必至だが、制度として破綻する可能性は極めて低い。保険料はしっかり納付しつつ、年金に頼らない生活基盤を確立することが重要である。
もともと「ショボ」かった日本の公的年金
日本の公的年金制度は賦課方式といって、現役世代の保険料で高齢者を支える仕組みになっている。自分が積み立てたお金を将来、受け取るものではないため、高齢化が進むと制度の維持が難しくなるという欠点がある。
しかしながら、日本の公的年金は設立当初から、明確に賦課方式にするつもりで制度設計したわけではなく、結果的に賦課方式にせざるを得なくなったのが実情であり、もともと老後の生活を完全にカバーできるようなものではなかった。
年金受給者が受け取る年金は、あくまでも補助的なものにすぎないというのは、国民年金の給付金額を見れば一目瞭然である。国民年金は現時点において、月当たり約1万6500円の保険料を40年間支払っていれば、65歳以降、月額約6万5000円の年金を受け取ることができる。支払う保険料は少額ではあるが、もらえる年金の絶対額も少ないので、これだけで生活することはできない。
つまり、日本の年金制度は、家族の誰かが老後の面倒をみるという前近代的な世代間扶養のシステムを制度として拡張しただけであり、欧州に見られるような完全な年金制度とは考えない方がよい(実際、厚労省もそう説明している)。
今回の年金2000万円問題の原因の1つは、日本の公的年金制度が欧州型であると誤解している人が一定数存在しており、老後に2000万円が必要とした金融庁の報告書に対して「そんなこと聞いていないぞ」と驚いてしまったことである。
若年層の人にとっては「何を今さら」という話かもしれないが、年金に対する誤解は、実は若い人たちにも存在するというのが今回の記事の趣旨である。
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