「公的年金なんて無意味」とうそぶく若者が将来確実に年金にすがる理由:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
若者から期待されていない公的年金。しかし著者は「20年後に今の若者も年金頼りになる」と指摘する。昔から繰り返されていた「年金絶望論」の真実とは?
結局、誰にとっても年金は「最後の砦」
少々、意地悪なことを書いたが、筆者が主張したいのはそこではない。
日本の年金制度はそもそも不完全なものであり、いつの時代においても、公的年金だけに頼ることはできないという現実について理解しておくべきだと言いたいだけである。
現時点において、150万円以下しか年金をもらっていない高齢者は何と約6割に達する状況であり、もっとも多額の年金をもらっているはずの男性の厚生年金加入者に限定しても平均額は年間192万円しかない。年金などアテにならないという若年層の認識は正しいが、大事なのはその感覚を今後も保ち続け、老後の準備を継続していくことである。もし行動に移せないのであれば、今の中高年と同じ状況に陥ることは容易に想像できる。
一方、政府がむちゃなことをしなければ、年金制度そのものが破綻する可能性は極めて低い。どの世代であれ、年金に頼らないと生活できないような人生設計を行うことは避けるべきだが、平均的な所得水準の国民にとって、公的年金が「最後の砦」として機能し続けるのもまた事実である。
年金の保険料は満額、支払うことができるよう留意すべきだし、自分がどのくらい年金をもらえそうなのか、常にチェックしておき、10年に1回は人生設計を見直す必要があるだろう。将来、自分がいくら年金をもらえそうなのかは「ねんきんネット」にアクセスすればよいので、それほど大きな手間はかからない。今はまだ、将来のことについて考える余裕はないかもしれないが、それでも着実に準備をした方がよい。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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