MITメディアラボの失態に見る、スポンサーと研究資金の闇:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
米マサチューセッツ工科大学のメディアラボ所長が、性犯罪で起訴された富豪から資金を受け取り、隠蔽しようとしたことが暴露された。世界的な研究機関が“怪しい人物”からカネを受け取ってしまったのはなぜか。背景には、研究機関とスポンサーの関係がある。
先日、米国人の知り合いから「これはもう見たか?」とメッセージが届いた。
送られてきたリンクは、米ニュースサイトで掲載された「MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの所長が危機的状況にある」という記事を紹介するツイートだった。そこには、「MITの学生たちが所長に辞任するよう求めている」とも書かれていた。
9月7日、MITは学長名で声明を発表。大学傘下の研究機関「MITメディアラボ」で所長を務めていた伊藤穣一教授が、所長職のみならず大学の教授職からも離れると明らかにした。その理由は、「少女への性的虐待疑惑で起訴された米富豪ジェフリー・エプスタイン氏(8月に自殺)から資金を受け取っていた問題で、同氏の性犯罪歴を知りながら、支援を受けた疑いが浮上した」(日本経済新聞9月8日付)からだ。
知人は筆者がMITに留学していたことを知っていたため、冒頭のメッセージを送ってきたのだった。知人とのやりとりではさらに「MIT全体だけでなく、メディアラボに関わっている企業も混乱しているだろうね」とも指摘していた。
この人物が言うように、メディアラボは民間企業とかなり密につながっている。また、米国大学の研究機関などに属する上級職員などは、企業やスポンサーから研究費を引っ張ってくる能力も重要になる場合がある。それは、先端技術などの研究をしていることで世界的に知られているMITのメディアラボもしかりだ。
ただ今回の件では内部情報が漏れ伝わり、同研究所の褒められない「暗部」も露呈している。そこで今回は、このメディアラボの一件をもう少し深掘りしながら、企業と研究機関の関係を探ってみたい。
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