「来なくていい」と言われても不安? 台風があぶり出す“会社員という病”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
大きな被害を出した台風15号。駅に詰めかけた人たちが長蛇の列を作り、混乱が続いた。これを変えるには、働く人たちの意識の問題も大きい。世の中の仕事の多くは「不要不急」。会社員としてではなく、人として「出社しない」判断ができる社会であるべきだ。
「自分の仕事は不要不急」――落ち込む会社員たち
不要不急――。これは震災以降、何度も繰り返された言葉です。覚えている方も多いはずです。
不要不急の外出を控える、不要不急のモノを買わない、不要不急の車はご遠慮願いたい、不要不急のエネルギーを使わない……。
おそらくこれほどまでに、不要不急という言葉を聞いたことはなかったのではないか、と思われるくらい頻繁に使われました。
そして、多くのサラリーマンに会社が通達したのが、「不要不急の仕事の場合、自宅待機せよ」との指示でした。その理由は、計画停電に伴う通勤困難と節電です。
ところが、そんな企業側の思いとは裏腹に、その通達をネガティブにとらえた会社員たちがいました。
「震災直後、会社から自宅待機の指示が出されて、上司からも『必要がない限りは来ないように』と言われました。会議は当然ながら中止になった。社外の方との打ち合わせも延期。
それであらためて自分の仕事を精査すると、別に今やらなくても困らないだろうってことのオンパレードで。スケジュール帳に書き込まれていた仕事は、全て不要不急だったんです。
僕の仕事のほとんどが重要でもなければ、急ぎでもない。これまで忙しいと思っていたのは単なる幻想で、自分は社内失業しているんじゃないかってむなしくなってしまって。完全に自信喪失です」
こう話してくれたのは40代前半の男性会社員ですが、彼と同じように複雑な心情を告白してくれた人がたくさんいたのです。
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