繰り返される「のぞき見採用」 リクナビ問題に透ける新卒採用の“勘違い”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
「リクナビ」の内定辞退率予測データを巡る問題が広がりを見せている。採用側のコミュニケーション能力が貧弱だと感じる事例が毎年のように繰り返されている。学生にとって「就職先を志願する」ことは重い。採用側の姿勢を見直すことが必要だ。
リクルートキャリアが就活情報サイト「リクナビ」の閲覧履歴をもとに就活生の内定辞退率を予測して企業に販売していた問題で、トヨタ自動車とホンダに加え、リクルートホールディングス、さらにはメイテック、三菱電機、京セラ、テクノプロ・ホールディングスなども購入していたことが分かりました。
いずれの企業も「採用の合否には使っていない」と説明していますが、「どこに住んでるの?」と聞くだけでも、個人情報うんぬんでタブー視される世の中だというのに、こと就活に関しては“のぞき見オーケー”とは。実に微妙です。
これまでも企業はあの手この手で“のぞき見”を繰り返してきました。
2010年前後は「学生の素顔を知る手段」としてSNSを活用し、「企業から好印象を持たれるためのFacebook就活対策セミナー」なるものも増加。セミナーでは、企業に好印象を持たれるためのポイントとして、
- プロフィールアイコンは笑顔でアップの写真を使う
- 友達は50人以上フォローする
- 週に2回以上前向きな書き込みをする
を挙げ、学生たちはFacebook上の“人格”を必死で磨いていました。
といっても実際は、もっとシビアにのぞき見をしていたようで、「『こいつは使える』と認めてもらうには、最低でも友達1000人が必要。だから僕も手当たり次第名刺を交換して、友達申請をバンバン1カ月くらいかけてやってます!」だの、「『いいね!』をたくさんもらえているかどうかっていうのも、結構見られているんです。『いいね!』が多い人はコミュニケーション能力が高いと判断される。僕も『いいね!』をたくさんもらうためにつぶやいて、もらえないと落ち込んでしまいます」だのと、当時、学生たちが教えてくれました。
「いいね!」の数がコミュニケーション能力のものさしとは……。いったい何なのでしょう?
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