日本のダメ上司が部下のやる気を引き出せない“根本的理由”とは――元GE「リーダー育成専門家」が斬る:世界基準の部下育成法とは?(5/5 ページ)
日本企業で上司が部下のやる気を引き出せない理由を、GEで経営幹部育成に携わった筆者が解き明かす。部下の能力不足のせいにしていない?
部下に「共感しすぎない」ことも大事
さて、ここまで「共感」の重要性を強調してきましたが、1つだけ注意すべきことがあります。それは、「相手(部下)に共感しすぎない」ということです。
共感能力が高いことはもちろん素晴らしいことですが、相手に共感し過ぎていると、厳しいことが言えなくなってしまうからです。
最近の脳神経科学の知見によれば、他者の反応を感知するときに使う神経回路と、目標に集中するときに使う神経回路は、互いに抑制し合うということが分かっています。それはあたかもスイッチのオンとオフのように、どちらかが作用するともう一方は作用しないのです。
つまり相手に共感をしているときには、業績目標などについて厳しいことが言えなくなってしまい、逆に業績目標達成の衝動に駆られて突っ走っているときには、他者への共感ができないのです。
例えば業績が振るわない部下を会議室に呼び出して、あなたはハッパを掛けようとします。「目標に対して未達の部分をどう解決するつもりだ」という質問で切り出す前に、共感力の高いあなたは、「最近の調子はどうだい」と優しく尋ねます。
すると部下は、親が要介護状態になってしまったこと、子どもが学校でいじめの問題にあっていること、妻が病気になってしまい近々手術をしなくてはならないことなど、悩み事を一気に話します。
あなたの共感能力がここで発揮されてしまい、部下が置かれた状況や家族に対して深く同情します。そうして共感の神経スイッチが入ってしまうと、もう仕事のことで部下にハッパを掛けることなどできなくなってしまいます。
従って、共感の度合いをコントロールすることが大切になるのです。そのためには、自分の言動だけでなく、自分の感情についても客観視できるようになることが求められます。
目標達成のことばかり気にしていないか、共感することばかりして本当に言わなくてはならないことを忘れてはいないかと、常に自分の言動や気持ちをチェックしましょう。
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