なぜデンマークは、消費税が25%でも軽減税率を導入しないのか:専門家のイロメガネ(4/8 ページ)
軽減税率は、一見すると正しそうな制度に見えるが、この制度が原因で、小売業界と飲食業界は混乱の極みにある。軽減税率は徴税コストが高く、線引きに手間がかかり、脱法行為を生み出しかねず、高所得者に有利。だから軽減税率よりも別の手段で還元した方が好ましい。デンマークはこのように軽減税率そのものを完全に否定している。
弱者救済は消費税の枠組みを取り払って考える
そして5で説明されているように、効率的な増税対策は社会保障給付だ。これは低所得者に対する医療費や教育費等の引き下げによる還元なのか、直接的な現金の支給なのか、それとも所得税や社会保険料の軽減なのか、やり方はさまざまだがどのやり方でも軽減税率より確実に効率がいい。所得の低い人に限定して還元できることや、事業者に無駄な手間が生まれない事も極めて大きなメリットだ。
軽減税率の線引きはややこしいかもしれないけれど、生活必需品の税率を下げるのは当然では? と考えている人も多いだろう。しかし、消費税の枠組みの範囲内だけでバランスを取ろうとすれば、手間がかかる上に高所得者にも多額の還元がなされると説明した通り、ゆがみが生まれる。
EUでは主に食品・医療品・書籍が対象となるケースが多いようだが、何が生活必需品か決めるのは政治家ではない。個々の自由な判断に赤の他人が干渉、介入することは可能な限り避けるべきだ。これは大げさにいえば民主主義の根幹でもある。この大原則をオムツや生理用品も軽減税率に含めるべきと主張している人は忘れている。
オムツが認められれば布オムツが、布オムツが認められれば赤ちゃん用の洋服からタオル、はては玩具やベッドなどのベビー用品全般まで、権利の主張は広がる事は目に見えている。まさに泥沼だ。
食品でいえば、持ち帰りと店内の線引きですらヤヤコシイため、当然のことながら、食品の中でも贅沢(ぜいたく)品とそうでないものを区分けするのはまったく現実的ではない。スーパーで買い物のたびに、低所得者だけが還元を受けるといったやり方はもっと現実的ではない。結局一番手間のかからない対応は所得に応じた現金の還元だ。
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