上司はなぜ部下の価値観を「無視」してしまうのか?――元GE「リーダー育成専門家」が斬る:世界基準の部下育成法とは?(4/4 ページ)
部下の価値観に合わせて仕事を設計する……。言葉では簡単でも実はハードな管理職の仕事だ。GEでリーダー育成に携わった筆者が具体的にレクチャーする。
部下の習熟度、どう見極めるか
AMO理論を適用して、部下の育成ニーズについて大まかに分析ができたら、次はもう少し細かな分析に移ります。
ここでは、部下が担当する職務(Job)を構成する課業(Task)レベルで分析する方法を紹介します。これも世界基準として定着しているケン・ブランチャードの「状況対応リーダーシップII」(SLII)の考え方を援用して述べていきます。
1つの職務は通常、複数のタスクによって構成されています。そのタスク毎に、部下のコンピテンス(発揮している能力、知識、技能)と、コミットメント(意欲、自信)の度合いを4段階で評価します。
例えば、中堅社員として活躍している部下のA君がいるとします。現在担当している職務を構成する全てのタスクについて、彼は大変よく習熟しているとします。
そこであなたは上司として、彼に新たに2つのタスクを追加して担当させることにしました。従来担当してきた習熟度が高いタスクについては、あなたはすでにA君に対して承認権限を委譲しています。だからといって新たに追加したタスクについても権限委譲して良いとは限りません。
A君にとって新たなタスクは、未経験であり、難易度もそれなりに高いものであるとしたら、習熟度は初心者レベルですから、あなたは指示・命令を出す必要があります。
やがてA君はその新しいタスクについても習熟してきたとします。そうしたらあなたはその習熟度合いを見極めて、対応の仕方も変えなければなりません。つまり、部下への対応の仕方や育成のための基本的アプローチは、部下が担当するタスク毎の習熟レベルによって、タスク毎に変えることになります。
A君の習熟度が上がってきたら、従来の「指示」から「コーチング」へ、そして「支援」「権限委譲」へと4つの異なる対応が上司として求められます。
1人の部下について、全体感として評価することも大切ですが、いざ具体的に部下育成に取り組もうとしたときに、何から手を付けて良いのか分からなくなる場合があります。そのようなときは、AMOによる分析をするとともに、部下が担当する職務について、それを構成するタスク別に分析・評価するというアプローチも取り入れてみてください。
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