世界の水源を荒らす、中国の「ペットボトル飲料水」事情:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
小泉進次郎環境大臣の発言で地球温暖化問題などがあらためて注目されそうだが、「ペットボトル飲料水」の問題も深刻だ。需要拡大に合わせて水をくみ上げる中国企業に、ニュージーランドなどの水源地が反発。できる限り資源を守ることを考える必要がある。
「It's not made in China」という飲料水も
余談だが、中国国内でもペットボトル飲料水は作られており、輸出もされているが、中国製のペットボトル飲料水は国外でイメージが良くない。例えば、19年1月に開催されたテニスの全豪オープンでは、公式ペットボトル飲料水が中国製だったことで批判が起きている。広東省深センの企業である百岁水(Ganten)の製品だったが、なぜ水資源の豊富なオーストラリアが中国から水を輸入し、中国企業が有名テニス大会で公式スポンサーになっているのか分からない、とSNSを中心に炎上した。
またこんな話もある。南アフリカに「It's not made in China(中国製品ではない)」という飲料水メーカーが存在するのだが、そのメーカーが販売しているペットボトル飲料水が「人種差別的だ」として中国で大反発が起きている、というニュースが少し前にあった。このケースでは「中国製ではない」という文句で商品が売れると見越して、飲料水を販売していたのである。(参考:公式サイト)
そもそも、ペットボトル飲料水を1本作るのには、そのペットボトルの4分の1の石油、そして3本分の水が必要になるという(水問題を研究する米パシフィック・インスティチュート調べ)。決して環境に良いとはいえない。ただ現代では、ペットボトルの水が存在しない世の中は考えにくい。そうなると、どれくらい環境に優しく提供または消費できるのかを検討する必要があるということだ。
世界にはこうした環境問題を真剣に検討している人たちがいる。環境保護団体や市民団体、民間企業、そして各国の環境問題を専門に扱う省庁の役人たちである。もちろん、小泉大臣のような環境大臣もその中に含まれる(はずだ)。
さまざまな環境問題を考える省庁のトップとして、今回の「セクシー」発言が話題になったことで、今後は日本のみならず世界もその動向に注目するだろう。具体的な言動が求められている。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最新刊は『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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