「セクシー大臣」を騒ぎ立てる“ジジイの壁” 失われる日本の競争力:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
小泉進次郎環境相の「セクシー」発言が話題になったが、そんなことを言っている場合ではない。かつてリーダー的立場だった「地球温暖化対策」で、日本は世界から取り残されている。“前例主義”から抜け出さないと、日本の競争力はどんどん失われていく。
温暖化「ウソ論」に科学的根拠はない
今回はいつものネタとは若干違う方向性のコラムになりましたが、私は気象予報士でもありますので、最後にトランプ大統領のパリ協定離脱表明以降に再燃した、温暖化懐疑論についてお話しておきます。
結論からいうと、温暖化にはいまだ“不確実性”が残っていることは事実です。しかしながら、「温暖化のウソ論」を裏付ける科学的根拠は、一切認められていません。
例えば、ウソを訴える学者は……、
◎温度が上昇しているのは二酸化炭素によるものではなく、「太陽活動の影響だ」「ヒートアイランドの影響だ」といいますが、これらの影響を加味し分析しても、現在の気温上昇率の説明から、二酸化炭素の増加分の影響を取り除くのはムリ。
◎「実際には気温は上がっていない」などと批判しますが、こういった人たちは「上昇していない地点」のみ取り上げている。気温上昇は一様に起こるものではなく、地域差があるという大原則を無視している。また、気温の変化は線形ではなく、最初は極めて緩やかで、ある時点から爆発的に変化する。
◎「地球は温暖化ではなく、氷河期に向かっている」という人は、議論の“ものさし”を都合よく変えているだけ。一万年単位でみれば現在は「間氷期」。温暖化の議論は、100年単位を問題にしている。
といった具合に、誤解、曲解、時間的・空間的スケールなどを都合よく用いているだけに過ぎません。チェリーピッキングを多用することで、自分の主張があたかも「科学的エビデンスに基づいている」かのごとく主張しています。
つまり、「温暖化はウソかもしれないし、ホントかもしれない」。ただし、今のところウソを裏付ける証拠は全く確認されておらず、ホントを裏付ける証拠はいくつも確認されている」というのが正解、なのです。
「裏切るなら絶対に許さない」というグレタさんの涙の訴えを忘れないでください。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
お知らせ
新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)が発売されました!
2017年発売の『他人をバカにしたがる男たち』で解説した「ジジイの壁」の背景となる「会社員という病」に迫ります。
“ジジイ”の必殺技は「足を引っぱる」こと。公の場で「彼女の発言を補足しますと……」と口を挟んでしまう“面目つぶし”、「私は指示したのですが○○が動かなくて……」と相手を悪者にする“責任逃れ落とし”、他人に関する必要のない情報を上司に伝える“アピつぶし”、そして“学歴落とし”や“悪評流し”――。
不毛な言動に精を出して「ジジイ化」してしまう人たちのジレンマと不安の正体について解説します。
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