リゾート地で働いた社員はなぜ、成長して戻ってくるのか ヌーラボの「リゾートワーク」、ちょっと変わった条件とは(2/3 ページ)
青い海が果てしなく広がる沖縄県の宮古島市、「写真写りの良い町づくり」で知られる北海道の上川郡東川町――。ここでリゾートを楽しみながら働ける制度を作ったのがヌーラボだ。ただ、働くためには条件が……。
目的は「非日常の体験から新たな視座を得ること」
同社でプロダクトマネジャーを務める吉澤毅氏は、リゾートワーク制度を活用したことがある社員の一人だ。宮古島でのリモート就業は、作業を中断させる要素が少ない分、「非常に高い集中力で仕事ができた」という。
「やらなければならない仕事を早く済ませて、島でのレジャーを楽しみたい――という気持ちになるのが面白かった。予想以上にモチベーションが上がりましたね」(吉澤氏)
吉澤氏は、リゾートワークと合わせて有給休暇も取得。現地でレンタルできる原付バイクで島内を散策し、「リゾート」としての宮古島も満喫したという。
担当した特別授業のタイトルは「英語を話せなかった僕がシンガポールで働いてきた」。吉澤氏は、ヌーラボがシンガポールに拠点を立ち上げた際に、1年半ほど現地に滞在して仕事をした経験がある。それまで英語が話せず、海外に行ったこともなかった自分が、現地でどのように英語と向き合い、何を考えたのかについて、中学2年生に向けて話したそうだ。
「授業での子どもたちの反応や、彼らとの対話は非常に新鮮でした。また、授業後に、現地で教育に携わっている方々と食事をしながら、宮古島が抱えている課題などを、生の声として伺うことができました。
私は普段、オンラインでチームのコラボレーションを行うためのプロダクトを作っていますが、そのユーザーとなり得る人たちが、どんな課題を抱えているのか、それを解決していくために、自分たちの立場で何ができるのかを考える良いきっかけになったと思います」(吉澤氏)
同社のリゾートワークは、今のところ「非日常の体験から生まれる新しい視座」を社員に得てもらうことに主眼を置いている。また、同行する家族の旅費も一部負担していることで「社員の家族にも、会社に対するエンゲージメントを高めてもらうという効果が生まれている」(安立氏)という。合わせて、この制度を発表した後には一時的に入社希望者も増え、採用面でもプラスの効果が認められたそうだ。
「これは制度の導入後に感じたことなのですが、ヌーラボの場合、中途採用が多かったり、社員の入れ替わりが比較的少なかったりといった理由から、社員の平均年齢が30代半ばと、少し高くなっています。そうした年齢層の社員に、どのような形で研修を行うのが良いかと考えたときに、管理職としての一般的な知識を身につけるマネジメント研修は、あまり効果的ではないようにも思っていました。
むしろ、一時的に非日常に身を置き、“授業”という形で自分の知識や考えを伝えるという実体験からのほうが、本人にとっても、会社にとっても得られるが多いのではないかというのが、リゾートワーク制度を『研修』に位置付ける理由にもなっています」(安立氏)
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