世界初の乗りもの「DMV」 四国の小さな町は“新しい波”に乗れるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
徳島県が2020年度、世界初のDMV(デュアル・モード・ビークル)による定期営業運行を始める。その舞台は阿佐海岸鉄道だ。沿線にはサーフィンで有名な海岸などもあり、観光の魅力もある。DMVが新たな観光資源になることを期待したい。
2020年度、世界初のDMV(デュアル・モード・ビークル)による定期営業運行が始まる。「線路も道路も走る面白い乗りもの」だ。場所は徳島県と高知県の海沿いを走る第三セクター、阿佐海岸鉄道。沿線の海陽町、東洋町にはサーフィンで有名な海岸があり、観光面の魅力も大きい。DMVを新たな観光資源にするため、自治体と事業者が連携し取り組みを始める。
阿佐海岸鉄道という名はめったに全国ニュースに現れない。鉄道ファンにとっても「知る人ぞ知る」存在だ。だが、時刻表の巻頭地図を隅々まで眺める乗り鉄は知っている。「JR四国の牟岐線の先っちょにある、なんだか乗りにくい場所の短い鉄道」だ。
何しろ、徳島から各駅停車で約2時間もかかる。高松からは特急「うずしお」を乗り継いで約3時間半。高知からは土佐くろしお鉄道と室戸岬経由のバスを乗り継いで約4時間だ。そうなると単純往復は面白くないから、高知〜室戸岬〜徳島と乗り継ぐルートがオススメだ。しかし運行本数が少ないから途中下車するなら宿泊を伴う。DMVが走り出したら泊まりたくなるかもしれない。
かいふ、ししくい、かんのうら……ってどこ?
阿佐海岸鉄道という会社は、阿波・徳島の「阿」、土佐・高知の「佐」に由来する。阿波と土佐を結ぶ。つまり、徳島と高知を結ぶ。とてもスケールの大きな名前だけれども、運営する「阿佐東線」はわずか8.5キロ。JR牟岐線の終点、海部(かいふ)駅から乗り換えて2駅しかない。終点は甲浦(かんのうら)駅。難読駅名としてクイズネタになる。中間駅は宍喰(ししくい)駅。動物駅長ブームに乗って「伊勢エビ駅長」を任命したけれども、話題性としてはどうか。
阿佐海岸鉄道の場所を一言で表すと「四国の右下」である。方角的には南東だけど、北が上の地図を広げれば確かに右下。徳島県はこの地域の5市町をまとめた「四国の右下観光局」を設置した。JR四国なども徳島〜高知間の公共交通を組み合わせた「四国みぎした55フリーきっぷ」を販売している。もちろん阿佐海岸鉄道も参加している。
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