石原さとみが魅力語る 東京2020パラリンピックで東京は変われるか:新連載「パラリンピックで日本が変わる」(4/4 ページ)
石原さとみがカウントダウンセレモニーでパラスポーツの魅力語った東京2020パラリンピック。スポーツ庁の鈴木大地長官をはじめ東京2020パラリンピックに関わる人々やスポンサー企業、選手たちに取材し、現状をどのように受け止めているのかを聞いた。
スポーツ庁長官「課題」語る
開催国としては、当然ながら競技力も求められる。パラリンピックの競技力についての日本の課題と、障がい者のスポーツの現状について、スポーツ庁の鈴木大地長官に話を聞いた。
1964年の東京パラリンピック当時は、日本選手団は多くの人が入院患者だった。当時はリハビリとしてのスポーツだったが、80年代以降は競技力が向上。いまではパラリンピックもオリンピックと同様に、ハイレベルな競技が行われる大会になった。
しかし、2016年のリオデジャネイロパラリンピックでは、日本はメダルの総数は24個だったが、パラリンピックに参加を始めた1964年以降で初めて金メダルを1つも獲得できていない。鈴木長官も、競技力強化に課題があることを認めている。
「私もリオデジャネイロパラリンピックなど、日本のパラリンピック競技の現場を視察する機会がありますが、日本はパラリンピックの強豪国と比べて層が薄いと感じています。そのような中で今後どのように選手を発掘・育成していくかが鍵になるかと思いますが、この点はなかなか難しいところですね」
一方、東京2020パラリンピックによって、障がいのある人がスポーツを楽しむ環境が変わりつつあるかというと、必ずしもそうとは言えない。笹川スポーツ財団によると、「障害者専用もしくは優先スポーツ施設」は2018年時点で全国に141施設あることが分かっている。「障害者スポーツセンター」に限って言えば、全国に26カ所しかない。
しかし、これらの施設が東京2020パラリンピックの開催によって増えていくのか、もしくは障がいのある人とない人がともにスポーツが楽しめる施設が増えるかどうかは、現時点では見えていない。
「障がい者のスポーツも、エリート層にはサポートができていますが、草の根レベルのところでは正直十分とは言えないと思っています。特別支援学校や、地域に密着した学校や組織、施設を活用して、盛り上げていく施策をしているつもりですが、まだまだです。パラリンピックは目指さなくても、障がいのある人が日常的にスポーツができるような環境は作っていかないといけないと思っています」
東京は、夏季大会としては世界で初めて2回目のパラリンピックが開かれる都市でもある。東京2020に向けた機運は確かに高まりつつあるが、障がいのある人がスポーツをする環境や、暮らしやすい社会という面で、世界に誇れるような変革が起こせるかどうかは、まだまだこれからの取り組み次第だ。国がスポーツの環境を整え、企業がイノベーションを起こしていくことで、東京がどのように変わっていくのか――。取材を続け、注視していきたい。(一部、敬称略)
編集部よりお知らせ :今回から新連載「パラリンピックで日本が変わる」を始めます。選手や障がいのある人たちの思いを聞き、パラリンピックを取り巻く企業や人、行政の在り方を検討することによって「日本の未来」を考えていきます。
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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