“高齢者版追い出し部屋”だけじゃない 70歳雇用義務化がもたらす「どの世代にも残酷な未来」: 【新連載】人事ジャーナリスト・溝上憲文の「経営者に告ぐ」(4/4 ページ)
ベテラン人事ジャーナリストの溝上憲文が、人事に関する「経営者が対応すべき施策」を提言する新連載。今回は刻々と進む70歳雇用義務化について。この施策の先には、「現役世代の給与に手をつけなければならない」という厳しい現実が……。
今以上に現役世代の給与に手をつける可能性も
社員にとっては従来受け取っていた60歳までの生涯賃金の総額が65歳まで働くことで帳尻が合う計算であり、会社にとって懐(ふところ)はそれほど痛まないことになる。それが今後は70歳雇用義務、65歳定年制になり、さらにバブル期入社組など60歳以上の増加が見込まれる。今以上に現役世代の給与に手をつけてくることが予想される。
2.60歳到達前に、活躍が期待できない社員を早期退職募集などでリストラするという早期リストラも要注意だ。一般的には解雇するに足る合理的理由がなければ解雇は難しいが、じつは60歳以上の人は雇用確保を義務付けている高齢法によってより解雇することが難しいとされている。例えば60歳以上に限定した「早期退職募集」は困難とされている。
そうであるなら40〜50歳代にリストラに踏み切る企業も増えるかもしれない。ちなみに東京商工リサーチの2019年「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」調査によると、19年1〜6月の早期退職者数は約8200人。半期だけで18年1年間の4126人の約2倍に達している。この中にはもしかしたら60歳以降の雇用を意図した削減も入っているかもしれない。
現役世代にとっては60歳以降の雇用が確保されても決して安心というわけではない。今後は賃下げやリストラの脅威に加えて、60歳以降も楽な仕事をさせてもらえないどころか、給与も職務や成果に応じて大きく増減するなどの厳しい試練が待ち受けている可能性がある。
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