なぜ赤字でも安売りするのか? 「失敗する値決め」と「成功する値決め」の違いに迫る:上げるか下げるか「値決め」最前線(2/4 ページ)
消費増税で「値決め」に関する各社のスタンスに違いが出た。担当者にとって悩ましいのが「値決め」の考え方。プロが4つのアプローチで解説する。
価格はどうやって決まるのか
通常、何人からアンケートをとれば、それが「日本人の総意」といえるだろか。「いくらなら買いますか」「いくらなら買いませんか」「いくらなら検討しますか」――もちろん、精度や誤差をどこまで許容できるかによる。ただ、通常なら、1500人からアンケートをとれば、統計上、それなりの精度があるとされる。
私はコンサルタントとして、いろいろな企業と関わりがある。先ほど述べた1500人へのアンケートは、実際には「あくまで参考値」として使われている。担当者がアンケートを元に新商品の価格を立案しても、アンケートで「買う」と回答した金額で本当に買ってくれるかは分からない。もっといえば、買ってくれないことが多い。
担当者が1200円の売価を社内で提案しても、企業のトップが「いや、インパクトを与えるために1000円を切りたい」と直感的な決断を下す場合がある。だから、計算式が明確にあるというよりも、さまざまなファクターを組み合わせているというのが現実的なところだ。
さらに、中小企業では何の検討も行われず、「ノリ」で値付けが行われる場合が大半だろう。ただ、そういった場合は除くとして、一般的な価格決定のアプローチは次の通りだ。
代表的な価格決定のアプローチ
(1): 原価積立法
町工場を想像してほしい。金属の加工部品があるとする。図面通りに生産すると、材料はいくらで、労務費がいくらで、金型費がいくらで、設備の減価償却費がいくらで……と加算していって、最後に妥当な粗利益を加算して、価格を決める。読者が製造業で企業間取引の調達業務などに従業していたら、たぶんご理解いただけると思う。これはメーカーの下請け企業などが採用する方法だ。
(2): 市場価格類推法
原価は100円でも、世の中に1万円で買ってくれる人がいたら、1万円で売ってもいいはずだ。そこで、類似品の価格を調べたり、私が例に出したようにアンケート調査をしたり、これまでの実績を調べたりして、価格を決定するものだ。類似品の場合は、違いを分析し、いくらだったら売れるかを考える。
類似商品がなかった場合も、インターネット調査をしたり、オークションサイトに出品してみたりすれば、どれくらいの価格なら需要があるかが分かる。
ただし、繰り返しになるが、アンケート調査であれば、「この価格だったら買う」という回答があっても、実際には買ってくれない場合があるので、販売テストなどを行う必要がある。ここ数年で知られるようになった単語に「A/Bテスト」や「スプリットラン」があるが、これは異なる価格で売ってみて、消費者の反応を見るものだ。
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