なぜ赤字でも安売りするのか? 「失敗する値決め」と「成功する値決め」の違いに迫る:上げるか下げるか「値決め」最前線(3/4 ページ)
消費増税で「値決め」に関する各社のスタンスに違いが出た。担当者にとって悩ましいのが「値決め」の考え方。プロが4つのアプローチで解説する。
残りのアプローチは?
(3): 政策決定法
まったくの赤字でも、わざと安く決めるケースを指す。例えば、牛丼チェーンの「並牛丼」や、ハンバーガーショップの「チーズバーガー」といったように、代表的な商品を値上げしてしまうと、全体のイメージが悪くなり、客足が遠のいてしまうケースがある。
その場合は、消費税が上がったり、原材料費が上がったり、あるいは市場価格が上がったりしても、あえて価格を据え置く。むしろ値下げすることもある。また、ライバル会社をぎゃふんといわせるために、赤字で販売して、市場から撤退させる狙いをもつ場合もある。
あるいは、とにかく商品の販売シェアを拡大する時期だと判断し、値下げすることもある。逆に、松竹梅の弁当があったとして、「松」の弁当を思い切り高くすることも考えられる。「竹」を最も売りたい場合には、「松」を値上げすることで、割安感があるように思わせるのだ。
(4): 正味現在価値法
例えば、あなたが飼っているペットがいるとする。天災が起こって、あなたが飼っているペット以外は絶滅してしまった。そんなとき、動物園にあなたのペットを販売する場合を考えよう。原価といってもエサ代だけじゃない気もするし、類似商品もない。さらに、特殊すぎて「政策」の持ちようもない。
そんなとき、そのペットを買い取ることで、動物園に将来、どのような価値が生じるかを考える。そのペットがあと10年は生きるとして、そのペットを見るために世界中から年間100万人くらいは集まるかもしれない。入場料を1000円とすれば、1年で10億円、10年で100億円の価値が生まれるはずだ。すると、この100億円が販売価格になる。
これほど単純明快な計算はできないかもしれない。また、正確には現在価値を計算する必要がある。ただ、理屈としては将来に生み出す利益から販売価格を決定する手法は、確かに理にかなっている。
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