休日も“心”は疲弊 働きがいに影を落とす「休み方」の落とし穴:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
2019年版の労働経済白書では「働きがい」を数値化して分析。「休み方」と働きがいの関係も調査された。ただ休むだけでなく、仕事から心理的距離を置いたり、仕事以外の時間をチャレンジのきっかけにしたりできる休み方をしないと、“心の疲れ”は癒やせない。
今の日本に必要な「休み方改革」
働きがいを感じるために、会社はもっと働く人たちの心に「栄養」を与え、知的好奇心を高めるような休み方をさせる重要性が示唆されたのです。つまるところ、今の日本に必要なのは「働き方改革」ならぬ「休み方改革」。心に栄養を与えるには、有休消化はもちろんのこと、知的好奇心を高めるために「自己啓発休暇」なるものをつくるのもいいかもしれません。
そもそも「働く」という行為には、「潜在的影響(latent consequences)」と呼ばれる、経済的利点以外のものが存在します。潜在的影響は、自律性、能力発揮の機会、自由裁量、他人との接触、他人を敬う気持ち、身体および精神的活動、1日の時間配分、生活の安定などで、この潜在的影響こそが心を元気にし、人に生きる力を与えるリソースです。
ところが今の日本の職場では、潜在的影響がリソースとして機能せず、単なる「労働」に成り下がっている現実が存在します。本来であれば「しんどいし、つらいこともたくさんあるよ。でもね、やった! って思う瞬間があるんだよ。やっぱ働くっていいよね」と思える働き方・働かせ方ができていないのです。
そろそろ人=コストという考え方をやめ、「働いているのは人である」という当たり前に気付くべき。人の可能性を信じることができれば、休む権利をもっと認められるはずです。
そして、私たち自身もSNSで24時間つながる世界を遮断するなどして、仕事と心理的距離を置く休み方を大切にした方がいいかもしれません。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)。2019年5月、新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)発売。
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