その価格、妥当ですか? ユーザーが事後的に値段を付ける「あと値決め」はプライシングをどう変えるか:上げるか下げるか「値決め」最前線(4/4 ページ)
利用や使用後にユーザーが価格を決める「あと値決め」。決済サービスを手掛けるネットプロテクションズが8月にサービスを開始した。誕生の背景には、多くの企業が「何となく」価格を決めている現状がある。客観性の乏しい商品やサービスの価格を、あと値決めはどう変えていくのか
多くの会社、値決めは「何となく」
ネットプロテクションズはもともと、決済サービスで成長を続けてきた。EC向け後払い決済システム「NP後払い」を主軸に、B2B向け決済システムなども展開。2002年のサービス開始以来、累計利用企業は260万社を超え、年間流通総額は3000億円と、業界内でのシェアはトップを誇る。
一方で、サービスを展開する上で培ったノウハウやリソースをもっと有効活用したいという思いもあった。こうした中で生まれたのがあと値決めだ。
同社では販促支援なども以前から行っている。競合を分析する中で見えてきたのが、「ほとんどのマーケティング支援は『見せ方』や『伝え方』に終始している」という点だ。こうした理由から商品やサービスを根幹から変えるプライシングの面にチャンスを見出していた。また、後払いシステムを提供しているため、ポストプライシングに関しても優位性を持っていた。
企業の「値決め」に目を向けると、「多くの会社では、何となく価格を決めている」(専光氏)。企業の価格設定を大別すると、原価等のコストを積み上げて価格を設定する企業と、最初は高めに設定し、競合が出てきたときに徐々に引き下げていく企業に分けられるという。何となく価格が決められた商品が売れる中で、市場の相場が決まっていくのがほとんどだという。
こうした中で「適正価格ではないものも数多くある」ということを専光氏は感じていたという。また「感じたものをそのまま感じたように支払うのが自然だ、と考えている人も増えてきている」。こうした背景から、ユーザーが価格を決め、価格の妥当性の担保もされるあと値決めは生まれた。
ゆくゆくは企業のブランディングに
サービスの導入に際して、値決めのタイミングなどにもネットプロテクションズがコミットする。「単に『設定した価格以上にユーザーに支払ってもらえるサービス』だと企業に考えてほしくない」と専光氏は話す。商品やサービスを提供して評価してもらうというだけでなく、それに関するストーリーや企業のメッセージなどを一緒に伝えられることに意義があるサービスだと考えている。
利用企業数については、19年度中に50〜100社ほどまで増やすことを目指す。ただ、あまねく全ての企業への導入を目指しているわけではない。思い描くのは、利用している企業のブランド化だ。「ユーザーからのコメントが見られる以上、使い続ける企業には一定以上の安心感や品質が求められる」と考えている。
そもそも、商品取引の黎明期には定価というものはなく時価であったり、取引先に合わせて価格を変動させるのが主流だった。これが大量生産、大量販売の時代を迎え、定価という存在が生まれた。ユーザーの評価によって価格が変動するあと値決めは、プライシングのこれからをどう変えていくのだろうか。
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