その価格、妥当ですか? ユーザーが事後的に値段を付ける「あと値決め」はプライシングをどう変えるか:上げるか下げるか「値決め」最前線(3/4 ページ)
利用や使用後にユーザーが価格を決める「あと値決め」。決済サービスを手掛けるネットプロテクションズが8月にサービスを開始した。誕生の背景には、多くの企業が「何となく」価格を決めている現状がある。客観性の乏しい商品やサービスの価格を、あと値決めはどう変えていくのか
サービス開始後の反響
気になるのはユーザーが実際に支払った金額だ。専光氏によると、「全体的に安い、とか高い、といった傾向はまだない」という。ただ、ミュージカルなどを手掛けるP.A.TOKYOが導入したケースでは、もともとの定価が3000円の公演を最低価格500円に設定。詳しい金額は明かさなかったが、最終的に支払われた金額はもともとの定価と比較して激しく高かったり安かったりはしなかったという。「良い意味で誰か1人の声が大きい、ということはなく『価格の民主化』が進んでいる」という受け止めだ。特に目立ったトラブルもないという。
サービス開始後、意外な反応もあった。当初、企業側が設定した金額に「チップ」的に上乗せして支払われる金額は、500円ほどと予想していた。しかし、実際には2000〜3000円ほど上乗せして支払うユーザーもいるなど、かなり幅広い使われ方がされているという。
また、ユーザーのコメントも予想以上に多く寄せられている。専光氏によると、「通常のアンケートで『コメント欄』があれば回答率は5%あれば高い方」。あと値決めでは、90%ほどのユーザーがコメントを書いている。当初は高くても70%ほどを想定していたというから驚きだ。
さらに、コメントの量も申し訳程度ではなくしっかり書かれているものが目立つという。「値決めに自由度がある分、その裏付けとしてしっかりコメントを書く傾向にあるのでは」と分析している。
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