その価格、妥当ですか? ユーザーが事後的に値段を付ける「あと値決め」はプライシングをどう変えるか:上げるか下げるか「値決め」最前線(2/4 ページ)
利用や使用後にユーザーが価格を決める「あと値決め」。決済サービスを手掛けるネットプロテクションズが8月にサービスを開始した。誕生の背景には、多くの企業が「何となく」価格を決めている現状がある。客観性の乏しい商品やサービスの価格を、あと値決めはどう変えていくのか
ユーザーが付けた価格とコメントは全て開示
あと値決めは、ユーザー側も企業側にもメリットがあるサービスだ。ユーザーは、アプリの登録やクレジットカードの登録、書類の提出などは一切必要ない。本人確認は電話番号の下4ケタで行う。ユーザーは、サービスを利用したり、何かを購入したりした後、設定されたタイミングで値決めを行う。値決めでは、「使いやすさ」「対応品質」などの軸に沿って価格を決定する。
決定する際には、他の人がどのようなコメントをして、どのような値決めをしたかがまとまった「みんなの値決め」を参照できる。いろいろな人の付けた価格を見ることによって、柔軟に値決めできるようにするのが狙いだ。誹謗(ひぼう)中傷や個人を特定する情報以外は基本的に全件全開示をモットーとしており、ユーザーの率直な声を知ることができる。
企業側は、こうした消費者のコメントや評価を詳細にチェックできる。サービスの評価項目について、細分化して反応を見られることに特徴があるという。また、入力情報の管理や請求、督促までをアウトソーシングできるため、手間も少ないまま既存のサービスの決済システムとして組み込むことができる。
なお、あと値決めの利用料も、企業側が後から決める(決済手数料は除く)上、原則として無料としている。「NP後払いなど先行するサービスに付随したサービスのため、固定的なコストがかかっていない」(担当者の専光建志氏)というのが理由だ。利用料が支払われた場合には、これから導入する企業への支援として使う予定だという。つまり、企業側としては実質的に決済手数料だけで利用することも可能。新規顧客の獲得にかけるコストなどを考えてみても、かなりお得なサービスだといえるだろう。
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