「さば」はなぜ「ツナ」を超えたのか? 熱血“さば”社長と外食産業の“必然”が生んだブーム:新連載・食の流行をたどる(1/6 ページ)
「さば」の大ブームが起きている。食のブームを分析してみると、いくつかの共通項目がある。さばブームをけん引した熱血社長の取材から見えてきた流行の条件とは?
新連載・食の流行をたどる:
「レモンサワー」「一人焼き肉」「ギョーザ」「パンケーキ」「かき氷」――毎年のように新たなブームが生まれる。これらのブームの背景を、消費者のライフスタイルの変化や業界構造の変化も含め、複合的に分析していく。
“鯖(さば)”は、「塩さば」や「さば煮」といったように昔から家庭の食卓に並ぶ魚である。言葉を選ばずいえば、ブームからは程遠い地味な食材である。
そのさばが数年前から、注目を集めている。空前のさばブームであり、外食でもさまざまなシーンで食す機会が増えた。また、外食マーケットを脅かす存在である中食においても、さばを使ったメニューが次々と登場している。そして家庭では、さば缶が空前の大ヒット。2018年にはなんとツナ缶の生産数量を抜いたというニュースも流れた。某レシピサイトでも同年、サバ缶を使ったメニューが食のトレンドを象徴するものとして表彰され、さば缶が品薄になるという社会現象も起こったのだ。また、スーパーの棚におけるさば缶の占拠率も上がった。
外食、中食、内食(家庭)。この3つのマーケットに起こった現象をもとに、さばブームの背景を解説しておきたいと思う。
さば料理専門店「SABAR」の衝撃
みなさんは、さば料理専門店「SABAR」というかなりエッジの効いた居酒屋をご存じだろうか?
これは、09年1月から、さばの物販を中心に手掛けていた「株式会社鯖や」(大阪府豊中市)が運営するさば専門の居酒屋である。現在は、関西に12店舗、首都圏に3店舗、その他の地域は7店舗、シンガポールに1店舗まで広がっている。
「とろさば」との出会いの場をコンセプトにしたSABARは、「飲食店は食材をプロモーションし、流通させるインフラ」という言葉がぴったり当てはまるような存在だ。
そのスタイルは、かつてのスターバックスコーヒーと似ている。コーヒーを売るのではなく、ライフスタイルを提案し、日本におけるコーヒーショップをサードプレイス(職場でも家庭でもない第3の場)として定着させた。
同社は13年に、より多くの人にさばの魅力を伝えたいと、クラウドファウンディングでの資金調達とプロモーションを実施し、一気に関東への進出を実現させたことで飲食業界の話題をさらった。
いわし料理専門店、ジビエ専門店、鴨料理専門店など、なんらかの食材に特化した業態はかつても存在した。だが、これだけエッジの効いた業態で多店舗展開している業態がいまだかつて存在しただろうか? 筆者の知る限りでは、鶏料理専門店(焼き鳥)くらいではないかと思っている。
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