「さば」はなぜ「ツナ」を超えたのか? 熱血“さば”社長と外食産業の“必然”が生んだブーム:新連載・食の流行をたどる(2/6 ページ)
「さば」の大ブームが起きている。食のブームを分析してみると、いくつかの共通項目がある。さばブームをけん引した熱血社長の取材から見えてきた流行の条件とは?
伝道師が語るさばの魅力と可能性
外食におけるさばブームの火付け役といっても過言ではない、SABARを展開する鯖や代表取締役の右田孝宜氏に話を聞いてみた。
「決して飲食店経営がなりわいではなく、飲食店はあくまでもさばを伝達するメディア。飲食店を通じて、さばの素晴らしさを伝えたい」と熱く語ってくれた。
国内において、さばは親しみ深い食材ではあるが、その食べ方は和食が中心。バラエティの幅を広げることで、国内の出荷数を増加させたいと考えている。そこで、SABARでは世界17カ国の料理にアレンジし、さばの新しい食べ方を提案している。イタリアンや中華だけでなく、インド料理のタンドリーチキンに見立てた「タンドリーサバ」といった想像を絶するメニューも存在している。SABARは16年7月にシンガポールに出店。進出の狙いは、海外で「さばを食べる文化、習慣を根付かせたい」からとのこと。飲食店としてビジネスを展開するのが目的ではない。
そもそも、さばは歴史的にも日本の食卓に根付いており、日本人にずっと寄り添ってきた食材である。そして、さばほど可能性を秘めた食材はない。さばは、スーパーに並ぶ安価な切り身から、「関さば」「首折れさば」といった高級品まで幅広く存在する。産地や季節によって、これだけ価格の幅がある魚もそう多くないのではなかろうか? さば寿司一つとっても、スーパーで気軽に買える300円程度のものから、京都の老舗店にある1本5000円程度の高級さば寿司までバラエティに富んでいる。つまり、付加価値のつけ方次第では、展開できるマーケットがいくらでも広がるのである。
また、語りたいストーリーの多い食材でもある。さば寿司の原型である「しめさば」はその昔、日本海で水揚げされたさばを塩でしめて、丸一日かけて京都に運んだ。京都に到着する頃には味がいい塩梅になる。福井から京都に続く「鯖街道」に代表されるように、歴史的ストーリーのある食材なのだ。“ストーリー性”のある食材。これもブームが起きる背景として重要なキーワードである。
さばは水揚げ量、消費量ともに日本が世界一だ。供給が安定していることもビジネスを展開する上で大きな要素である。
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