関東圏鉄道各社のアプリに見る、利用者への接し方戦略:スマホにも、鉄道を(5/5 ページ)
関東圏の鉄道各社は、利用者のために運行情報などを提供するスマートフォンのアプリを提供している。JR東日本や東京メトロだけではなく、関東圏の大手私鉄でも出そろい、それぞれを相互に行き来しながら使用できるようになっている。各社のアプリを使ってみると、違いがあって……。
文字情報の使い方が上手な京成アプリ
京成電鉄のアプリは、アプリとしては後発のものであり、位置情報や運行情報を中心としている。そのため、サービスが少ないのが難点だが、列車種別と目的地を最小限の文字情報で伝えているのが特徴である。「スカイライナー」などは専用のアイコンで表示している。これからどうアプリの機能を増やしていくかが課題だ。
「駅から」を軸にした京急線アプリ
京急電鉄のアプリは、列車走行位置や運行情報、「駅視-vision」の提供を中心としている。アプリを開くと設定された駅の発車時刻と行先が表示され、鉄道利用の利便性をあくまで第一としている。「駅視-vision」の提供もその一環だろう。情報の提供も素早い。「京急らしさ」を軸にアプリが作られている。
チャットボットがユニークな相鉄線アプリ
相模鉄道が提供するアプリは、後発のものとしてはよくできている。運行情報や位置情報の提供はほかと同じだが、「そうにゃん」や「20000系」を着せ替えすることができ、相鉄に親しみを持てるようになっている。また、分からないことを聞ける「チャットボット」にも対応し、問い合わせへの即答も可能だ。
センスのよいアプリが、近くJR東日本への直通が開始され、「選ばれる沿線」競争に名乗りを上げてきた相鉄の競争力を高めることになるだろう。
関東圏の主要鉄道各社のアプリには企業戦略が見え、それぞれ利用者への接し方をどうするか、などを考えていることがよく分かる。利用者にとって便利な鉄道を目指していたり、「選ばれる沿線」に取り組んでいたり、どう利用者を大切にするかが、アプリの作り方からうかがえるのだ。
関連記事
- ちょっと前までチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が、減速した理由
ブームの牽引役などとチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が叩かれている。2018年12月決算は、8年ぶりに赤字。低迷の原因として、米国での閉店や類似店舗の増加などが指摘されているが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。 - 静岡県知事の「リニア妨害」 県内からも不満噴出の衝撃【前編】
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続けている。なぜ静岡県知事はリニア建設を「妨害」するのか? 現地取材で浮かび上がった実態を前後編でお届けする。 - 50年前から分かっていた少子高齢化問題、なぜ回避できなかったのか
「敬老の日」の昨日、この国の「敬老」の意味をあらためて考えさせられるニュースがあった。65歳以上の高齢者は約3588万人で、全人口に占める割合は28.4%と過去最高となり、これは同じく高齢化が進むイタリアの23%を大きく引き離し、世界一となっているというのだ。 - 新幹線と飛行機の壁 「4時間」「1万円」より深刻な「1カ月前の壁」
所要時間が4時間以内なら飛行機より新幹線が選ばれるとされる「4時間の壁」。それよりも「1万円の壁」を越えるべき、というコラムが話題になったが、新幹線の“壁”は他にもある。航空業界と比べて大きな差がある、予約開始「1カ月前」の壁だ。 - 子どもの数は減っているのに、なぜ「恐竜博」で110分待ちになるのか
国立科学博物館で開催されている「恐竜博2019」が、人気を集めている。9月の3連休には、最大110分待ちのときも。子どもの数は減っているのに、なぜ恐竜を見るために行列ができるのか。恐竜博の監修を務めている真鍋真さんに話を聞いた。 - 鉄道ファンの支持を集める「京浜急行」の秘密
京浜急行が、沿線住民のみならず、鉄道ファンの支持も集めている。その理由は、同社の独自性にあるようで……。 - なぜ地図で「浅草寺」を真ん中にしてはいけないのか
地図を作成している編集者に、2枚の地図を見せてもらった。1枚は浅草寺が真ん中に位置していて、もう1枚は浅草寺が北のほうにある。さて、実際に地図に掲載されているのは、どちらなのか。答えを聞いたところ、予想外の結果に!?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.