ホリエモンが語る「修業期間」を真っ先に捨てるべき、これだけの理由――職人ではなく「経営者」になれ:堀江貴文の『捨て本』【後編】(5/5 ページ)
本当にそれは必要ですか? 経営者としての「ホリエモン流」人生哲学。ビジネスにまつわる「捨てる」ことの意義を、3回に分けて紹介していく。後編は修業期間というものがいかに無意味かに加えて、経営者視点に立つことの重要性をお伝えする。
経営者視点を持ち続けよ
彼の寿司を僕も食べさせてもらった。うまい。ネタの質も仕込みも完璧で、この寿司が、修業期間の意味では“素人”のつくったものとは、信じられないレベルだった。ひと通り食べた後のシメは手製のラーメンだった。これがまた絶品にうまい。「寿司のシメといえば玉子とか、みそ汁を出すのが許せない」という理由で、ラーメンなのだという。
オリジナルのコーヒーも出してくれた。豆は独自のブレンドで、旨味(うまみ)の脂肪分を漉さない金属フィルターを使い、特製の南部鉄瓶で淹(い)れたという。これもやはり絶品。
Aさんのこだわりは「おいしく食べてもらって、喜ばせたい」に尽きる。修業してスキルを学ぼうという発想が根本からない。だから、本当の意味で客観性を失わず、何がお客さんを感動させるのか? という視点で、揃(そろ)えるべきものを揃えられたのだ。
彼は味を引き立てる設備と材料を得るために、素早く行動した。道具の揃えや店の構え、パフォーマンスに細部まで手をかけた。そのこだわり度合いは、僕から見ても、ちょっとぶっ飛んでいる。
でも、このぶっ飛びが、本当に優れた料理人に求められる要素ではないだろうか。時間は、かけたくない。できるだけ早く、できるだけ高い質の味を、お客さんに食べさせて褒められたい。そのためには、修業を捨てて好きなようにつくる。そのシンプルな欲求と破天荒なエネルギーが、唯一無二の新たな職人をつくりあげた。
著者プロフィール
堀江 貴文(ほりえ たかふみ)
1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダーも務める。元ライブドア代表取締役CEO。2006年証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、実刑判決を下され服役。13年釈放。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。19年5月4日にはインターステラテクノロジズ社のロケット「MOMO3号機」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。予防医療普及協会としても活動する。14年にはサロン「堀江貴文イノベーション大学校」をスタートした。本書『捨て本』(徳間書店)以外の著書に『健康の結論』(KADOKAWA)『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)など多数
関連記事
- ホリエモンが社員を「切り捨て」てきた真意――サラリーマン社会も楽な方に変えられる
本当にそれは必要ですか? 経営者としての「ホリエモン流」人生哲学。ビジネスにまつわる「捨てる」ことの意義を、3回に分けて紹介していく。中編はホリエモンが社員を「切り捨て」てきた真意を語る。 - ホリエモンが「東大卒ブランド」を捨てた理由――私はこうして起業家人生をスタートさせた
本当にそれは必要ですか? 経営者としての「ホリエモン流」人生哲学。ビジネスにまつわる「捨てる」ことの意義を、3回に分けて紹介していく。前編は東大を中退し起業家人生をいかにスタートさせたのかをお届けする。 - ホリエモンが政治家に頭を下げてまで「子宮頸がんワクチン」を推進する理由
ホリエモンはなぜ「子宮頸がんワクチン」を推進しているのだろうか。その裏には、政治に翻弄された「守れるはずの命」があった。 - 僕の足を引っ張らない社会を作る――ホリエモンが演劇をアップデートする理由
ホリエモンこと堀江貴文氏が主演を務め、現在公演中のミュージカル『クリスマスキャロル』。そもそもなぜホリエモンは芝居をやっているのだろうか? その真意を探った。 - ひろゆきが斬る「ここがマズいよ働き方改革!」――「年収2000万円以下の会社員」が目指すべきこと
平成のネット史の最重要人物「ひろゆき」への独占インタビュー。ひろゆきの仕事観・仕事哲学を3回に分けて余すことなくお届けする。中編のテーマは「働き方」――。 - ひろゆきの提言(1)――「1人産めば1000万円支給」で少子化は解決する
ひろゆきこと西村博之氏が、令和時代を迎える日本が今後どんなふうにヤバくなるのか、沈みゆく日本で生き抜くためにはどうしたらいいのかを3回にわたって提言する。第1回目は少子化問題について――。 - ひろゆきが“日本の未来”を憂う理由――「他人は変えられない」
「平成ネット史」の最重要人物、ひろゆきへの独占インタビュー最終回――。ひろゆきはなぜ「日本の未来」を憂うのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.