資産運用“素人レベル”の地銀、SBI「25億出資」の勝算とは:新連載・古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」(2/4 ページ)
地方銀行はもうダメだ――。まことしやかにささやかれている「地銀はもうダメ」論だが、どこがそれほどダメなのかを確認し、それでも地銀との提携を推進するSBIグループの狙いは何かを探っていきたい。
低金利政策の長期化により、地銀における国債の保有残高は、マイナス金利導入当時と比較しておよそ半分となった。全国銀行協会の調査によれば、国債の保有高は前年比で18%減となっているが、それでも18兆9002億円が国債で運用されている。これは、地銀が保有する有価証券のうち、3割に近い水準だ。他の債券も含めると、有価証券に占める債券の割合は66.8%にものぼる。これは、都市銀行の53.7%と比較しても高い水準だ。
低金利政策の長期化と、債券偏重の運用もあって、全国地方銀行協会が6月に公表した20年3月期の業績予想では、地銀の約7割が最終減益となる見通しを提示した。
“素人レベル”の運用例も?
マイナス金利の導入からちょうど5年が経過しているにもかかわらず、地銀の減益見通しに歯止めがかからない。その背景には、マイナス金利に対応できるような資産運用の高度化を十分に実施できていないことも大きい。
運用部門・市場部門・投資銀行部門など、高度な資産運用機能を有するメガバンクなどと異なり、長年安全資産で運用を実施してきた地銀は、リスク性資産の運用にノウハウが少ない。そればかりか、金融庁のモニタリングでは、地銀の“素人レベル”といわれても仕方ないリスク運用の実態も明らかになった。
今年3月に金融庁が公表した「金融システムの安定を目標とする検査・監督の考え方と進め方」には、その驚くべき実態が記載されている。同報告書では、金融庁がモニタリングした金融機関のうち、「株式の『ブル型ファンド』と『ベア型ファンド』を両方購入し、含み益となったファンドを売却して期間収益をかさ上げする一方、含み損の処理を先送りしている」金融機関が存在したと報告されている。
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