eスポーツ、高校でも普及するか 全国高等学校eスポーツ連盟が乗り越えるべきハードルと見習うべき「米国モデル」:いよいよ発足(2/2 ページ)
全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)が11月1日に発足。eスポーツに関する啓発活動などを交え、保護者や教師などに存在する「eスポーツ=ゲーム」という認識を払拭(ふっしょく)していくという。海外にを移すと、米国では学術的調査やビジネスとの関連付けで着々と加盟校を増やしている。
eスポーツの教育的価値
保護者や学校の教師に対しては、eスポーツの「教育的価値」を浸透させていく。例えば、eスポーツは久保理事長が話したようにユニバーサルスポーツなだけではなく、コミュニケーション、そして身体面からも高校生の能力を高められる。反射神経や瞬発力、そして集中力の高め方など、それぞれを見てみると従来のスポーツと何ら変わりはない。
「ゲームだから」という理由だけでなく、実際に部活を立ち上げる際などに前例がないため、どのようにすれば悩む教師も多いという。全国高校eスポーツ選手権大会のプロデュースに携わった大浦豊弘理事は「分からなかったり悩んだりしても問題ない。重要なのは学生の自主性に任せること」と話す。前例がないことを逆に生かし、教師側は部活内でのルール作りや礼儀作法など、自らのノウハウを生かせる部分でサポートすることを提言している。
日本の高校におけるeスポーツ普及を狙う上で参考にしているのが米国のケースだ。記者会見には、北米教育eスポーツ連盟(NASEF)のケビンブラウン副教育最高責任者が登壇。米国での高校生に対するeスポーツの取り組みが紹介された。NASEFでは、18年から19年にかけて加盟校が15倍以上に増加。当初はカリフォルニア州の学校のみの加盟だったが、今では42州にまたがり加盟校を増やしている。
NASEFでは、eスポーツに関連付けられる15の職種をリストアップ。ゲームにとどまらず、実際のビジネスにも役立てられるという点を啓蒙している。また、各大学や脳研究者と連携し、eスポーツが脳に与える効果を検証している。検証の結果では、問題解決や推論など「数学」的知識だけでなく、コミュニケーションに関する「社会的感情学習」において特に高い効果があることが明らかにされている。こうした啓発を通し、着実に賛同者を増やしている。
JHSEFはNASEFと提携し、こうした科学的分析や学校、そして保護者への働きかけを通して日本の高校でのeスポーツ普及を狙う。今後は日米高校生交流プログラムや、両国の教職員の交流などを検討している。19年の茨城国体でも、eスポーツがプログラムの1つに選ばれるなど、国内普及のチャンスは広がっている。「甲子園」や「高校サッカー」のように、高校生のeスポーツは国民的な理解を得られていくのだろうか。
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