GAFAへの反乱? 自ら「個人情報」を企業に差し出す人たち:変化する「個人情報」の捉え方(2/2 ページ)
巨大プラットフォーマーによる個人情報収集が問題化している。サービスがパーソナライズされて便利になる一方、パーソナルデータを抜き取られる現状に疑問を持つ人も多い。政府を中心に、制度構築の機運も高まっているが、まだまだ具体策は見えない。そんな中、抜き取られるだけではなく、自ら企業に情報を提供する流れが出てきた。
自ら「パーソナルデータ」を販売する時代
19年11月1日に設立されたPlasma(東京都目黒区)が展開する「Exograph」はその1つだ。Exographは、参加者のプライベート情報を収集する代わりに、20万円(税別)を支給するプロジェクト。参加者は、自宅の浴室以外にくまなくカメラを設置。1カ月間、自宅のプライベートな映像を24時間撮影し続ける。
Plasmaの遠野宏季社長は、プロジェクトの進捗(しんちょく)を、個人が投稿できるWebメディア「note」に記録している。プロジェクト概要のページでは、巨大プラットフォーマーのサービスを使うことで知らず知らずのうちに個人情報を収集されている点に違和感を覚える人が増えてきていると指摘。勝手に収集するのではなく、「個人情報を買い、対価を与える」と明確にしたプロジェクトが、どのように社会に受け止められるのかを検証したいというのがプロジェクトの狙いだ。
11月1日〜15日の期間で参加者を募集しているが、11月10日までに419人の申し込みがあった。遠野氏によると、「1万人規模のデータが集まった場合、企業がどれくらいの額で購入するかを検証してみたい」という。まだ実験前だが、目算としては「1人のデータ1カ月分につき1万円」を想定している。
また、企業へ直接的にデータを提供するのではなく、銀行へ預金するように自らの情報をデータベース化する人も出てきた。マイデータ・インテリジェンス(東京都港区)が展開する「MEY」は、その1つだ。
MEYのようなサービスは「情報銀行」と呼ばれ、「様々な分野において、個人情報を本人が自らの意思に基づき活用することを支援し、その便益を本人に還元することにより、官民データ活用推進基本法第12条に定められる『個人の関与の下での多様な主体による官民データの適正な活用』の拡大に資することが期待される」とされている(総務省「平成30年版情報通信白書」より)。企業がデータを事業に活用する中、情報管理に関する審査機関としても期待がかかっている。
情報提供に許諾をしたユーザーは、世帯構成や年収、ECサイトの利用動向など基本的な「マイデータ」や、仕事や家族に関する価値観「パーソナルデータ」を登録。なお、一度情報提供に許諾した場合でも、事後的に許諾を取り消すこともできるという。
その他「オファー」と呼ばれる、普段の生活や嗜好品に関する設問が用意されており、回答するごとにポイントが付与される。ポイントに応じて、用意されたラインアップの商品と交換できる。
登録されたデータは、企業のマーケティング活動などに活用される。19年12月31日までを「トライアル期間」として、現在はキリンホールディングス、明治安田生命保険などが活用している。19年10月末までで既に会員数は10万人を突破。マイデータ・インテリジェンスの広報担当者は「数年中に300万人規模まで会員数を広げたい」と話す。
このように、個人がデータを自らマネタイズする仕組みが出始めている。一方で、扱う情報が膨大になることから、企業は情報管理により高い意識を持つ必要がある。より収益性や生産性を高めるために重要な「データ」に関して、社会的な変容が起こり始めているのは確かだ。
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