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「ひ孫会社」まで登場 ヤフーとLINE、複雑すぎる経営統合の図式

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 「統合を果たし、日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」――ヤフーを傘下に持つZホールディングス(ZHD)の川邊健太郎社長は、ZHDとLINEの経営統合についてこう話す。統合後は両社が持つユーザー基盤やデータ、人材といった経営資源を集約し、大規模な開発や投資を行えるようにすることで、事業を強化し、GAFAやBATといった海外の大手IT企業に対抗する考えだ。

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会見の様子

 「GAFAの最大の脅威は多くのユーザーに支持されていることだが、GAFAには日本固有の課題にフォーカスしたサービスがあまりない。国産のプラットフォームとして、われわれはそこにフォーカスし、ユーザーに『もう1つの選択肢』を提供していきたい(川邊社長)

 LINEの出澤剛社長も、「これから多くの活動がデータ化され、日常生活とインターネットがシームレスにつながる時代になる。その基盤となるAI技術を活用して、新しいユーザー体験や課題解決に中長期的に取り組みたい」と意気込む。

経営統合で各社の関係はどうなる?

 ZHDとLINEは11月18日に、経営統合することを正式に発表。12月末ごろをめどに最終契約を結び、2020年10月までに統合する計画だ。統合の流れは以下の通り。

  1. 通信会社ソフトバンクと韓国NAVERが共同公開買い付け(TOB)を実施。LINEの全株式を取得し、LINEは上場廃止とする
  2. ソフトバンクとNAVERで、LINEの議決権が50:50になるよう取引し、LINEをソフトバンクの連結子会社とする
  3. ソフトバンクが保有しているZHDの株式(44.6%)をLINEに移管。ZHDをLINEの子会社とする
  4. LINEの全事業を新設する子会社(LINE承継会社)に引き継ぐ
  5. LINE承継会社をZHDの傘下とし、ヤフー事業を運営するヤフー株式会社などと並列関係に置く
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現在は「韓国NAVER(親会社)→LINE(子会社/メッセンジャーアプリ「LINE」を運営)」と「通信会社ソフトバンク(親会社)→Zホールディングス(子会社)→ヤフー(孫会社/「Yahoo!JAPAN」などヤフー事業を運営)」という関係性
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統合後は「ソフトバンク(親会社)→子会社のJV(議決権はソフトバンクとNAVERで50:50)→ZHD(孫会社)→LINEの事業を継承する新会社とヤフー(ひ孫会社)」となる

 その結果、ヤフー事業とLINE事業を運営する会社がそれぞれZHDの100%子会社として、兄弟会社という位置づけになる。モバイル決済サービスについては、PayPayは変わらずヤフー傘下となり、LINE PayはLINE事業を引き継いだ承継会社の下で運営するという。

 なお、ZHDは引き続き東証一部上場を維持し、トップには現社長の川邊健太郎氏とLINEの出澤剛社長が共同CEOとして就任。代表取締役は現任の川邊氏が務める予定だが、「共同CEO2人が対等の精神に則って経営統合を行う」という。

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最終的にはこのような形になる

大規模な投資と人材活用が可能に

 両社が提供しているサービスには、モバイル決済やニュース配信など競合するものも多いが、川邊社長は「ヤフーはメッセンジャーサービスを提供しておらず、LINEはそこまでECが強くないなど、統合によって互いの弱点を補えるようになる関係だ」と説明。各サービスの統廃合などについては「私としては引き続き切磋琢磨してやっていければと考えているが、具体的な話については、経営統合を果たしてからどうすべきか考えていく」(川邊社長)とするにとどめた。

 統合後は「双方が持つビッグデータの活用による、ユーザーに寄り添ったサービスや広告の提供」「PayPayとLINE Pay加盟店を相互利用できるようにするなど、モバイル決済サービスの利便性向上」「両社の株主が持つ5GやMaaS、音声アシスタントといった技術やサービスの活用」など取り組みを進めていく考え。両社が協力することで、年間1000億円規模の投資や、数千人規模のエンジニアやデザイナーなどの開発人材の活用が可能になるとした。

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 現在「Yahoo!JAPAN」の月間利用者数は6743万人、モバイル決済サービス「PayPay」の累計ユーザー数は2000万人超。一方、コミュニケーションアプリ「LINE」の月間利用者数は8200万人、モバイル決済サービス「LINE Pay」の国内登録ユーザー数は3690万人。統合すれば、インターネット関連サービスを一手に引き受ける巨大グループとなる。

 海外でもGAFAへの規制が進められているように、国内でも公正取引委員会などが巨大IT企業を規制する動きがあるが、これについては「われわれは審査される立場にある。特段のコメントはないが、審査や法の適用については、積極的に協力していきたい」(川邊社長)としている。

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