中国が着手した「6G」って何? 5Gから10年先の“覇権”を巡る思惑:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
米国や韓国、中国が「5G」の通信サービスを開始。一歩遅れた日本も2020年にスタートする。そんな中、中国が早くも「6G」の研究を始めたと発表。現実的な話なのか。今、“6Gの世界”を想像することは難しいが、日本もうかうかしていられないかもしれない。
超高速・大容量「5G」がもたらす変化
まずあらためて、5Gについておさらいする。5Gがどれほどの変革をもたらすのかを知るには、数字を見るのが手っ取り早い。
現在私たちが使っている4G(LTE)と比較すると、5Gは、速度が100倍早くなり、扱えるデータ容量は1000倍にもなる。5Gの超高速で大容量の通信を使えば、今なら2時間の映画をダウンロードするのに5分ほどかかっているのが、3秒とかからない。
また5Gには、低遅延と多接続という利点がある。通信の際に起きるタイムラグは1ミリ秒(1000分の1秒)以下になり、現在なら遠方の人と通信をするのに生まれるタイムラグはほとんどなくなると言っていい。多接続については、1平方キロメートルあたり、100万台の機器を同時に接続できる。さらにデータ通信はこれまで以上に安定するし、電力消費量も少なくて済むという。
ただ5Gは高周波数帯を使うことで、これまでのように電波が扇形に広がるのではなく、デバイスに直線的にデータを運ぶことから、建物や雨などにデータが遮断されてしまうという弱点がある。そのため、現在以上に多くの通信基地が必要になる。日本でも最近、各社が急ピッチで設置を進めているが、設置のための人手確保も難しくなっており、まだ幅広いサービスを提供するには時間が必要になると見られている。
一方、5Gがもたらす変化は、かなりのインパクトになる。18世紀末以降に工場の機械化をもたらした第1次産業革命から、20世紀初頭に電力などで大量生産を可能にした第2次産業革命、1970年代からのコンピュータやオートメーション(自動化)による第3次産業革命に続いて、5Gは第4次産業革命をもたらすとも言われている。5Gの高速・大容量・多接続・低遅延によって、私たちの身の回りがIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)で制御されるグッズであふれ、全てがネットワーク化される時代になる。
今ネットで「5G Future」と動画を検索すれば、世界中の大手メーカーや政府機関などが、それぞれの考える5Gの未来像を映像で表現している。チェックしてみるとその違いは興味深い。5Gはその経済効果も大きく、2025年には100兆円規模にもなり、そのさらに10年後には1200兆円規模にもなると言われている。それだけ新しい技術が、経済活動に寄与するということだ。
ただもちろん、明るい話ばかりではない。身の回りから社会の至る所まで全てがネットワーク化されると、プライバシーや情報漏えい、サイバー攻撃などのリスクは高くなる。その対策も、5Gのインフラ設置と同じようなペースで議論していく必要があるだろう。
とにかく、5Gがどんな時代になるのか――まだ世界中でそんなことが、明るい希望を持って語られている中で、中国が6Gの研究をスタートしたという。いったい中国は何をもくろんでいるのか。
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