部下への1on1やコーチングが失敗する訳――モチベ維持できない課長の“致命的欠点”とは:マネジメントの「本質」を問う(2/4 ページ)
部下のモチベーションを高めようと努力する企業の課長職。しかし1on1やコーチングが奏功していない職場も少なくない。ベテラン人材コンサルがそのメカニズムを分析。
マネジメントの「一部」しか実行できておらず
・会社から期待されている成果をあげること
・会社や部門の方針をかみ砕いて下ろすこと
・メンバーのベクトルを合わせること
・部下のモチベーションを高めること
・部下が仕事をやりやすいように環境を整備すること
・部下を育成すること
本稿をお読みの皆さんは「マネジメントとは何をすることか」と問われて、いくつ項目を挙げられるだろうか。私の経験では、課長の多くが挙げられるのは5項目ぐらいである。
管理職を対象に360度サーベイを実施している企業の方であれば想像可能かと思うが、管理職に必要な要素や行動がどの程度あるか思い返してみてほしい。測定している項目数(質問数でも良いし、カテゴリー数/構成概念数でも構わない)がいくつあるか。5つどころではない。マネジメントとしてすべきことはもっとある。「人は自らが知っていることしか実践できない」とするならば、多くの課長はマネジメント業務の一部しか実践できていないのが実情ではなかろうか。
では、そもそもマネジメントとは何か。マネジメントの定義は世の中にたくさん存在するが、私はさまざまな定義を参考にし「会社から預けられた資源(人・モノ・お金・情報)をもとに、任された組織の成果の最大化を図ること」としている。先ほど列挙した研修中に挙げられた意見をおおむね包含している。この定義から、世の中の課長(に限らず管理職の皆さん)に押さえてほしいことは2つある。
1つは、管理職は会社からマネジメント資源を預かっているという自覚が必要であるという点。課長にこの自覚があるかどうかは日々のマネジメントにさまざまな影響を及ぼしている。
例えば、部下Aさんという貴重な資源をどう見るか。Aさんの強みはどんな点で、それをどう生かそうと考えているのか、実際に生かしきれているか。入手したある情報(という資源)をどう編集・加工し、メンバーや組織へどのように伝えると成果にとってよりプラスか。部下や情報という大切な資源を課長である自分がどう扱うかによって成果が上下するという自覚、その有無から来るマネジメントの違い、ひいては成果の違いは無視できないものである。
「資源のやりくり」こそがマネジメント
もう1つは、組織の成果の最大化を図るという点である。メンバー一人一人の持っている経験や能力が似ている2つの組織があるとする。同じスタートでも月日を重ねると、2つの間には組織としての成果に大きな違いが発生することがある。
その一因は、相乗効果や補完関係が組織内に存在するか否かの違いがあるからである。この違いは、課長が資源を上手に"やりくり"しているかどうかに多大な影響を受ける。この"やりくり"こそがマネジメントである。
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