部下への1on1やコーチングが失敗する訳――モチベ維持できない課長の“致命的欠点”とは:マネジメントの「本質」を問う(3/4 ページ)
部下のモチベーションを高めようと努力する企業の課長職。しかし1on1やコーチングが奏功していない職場も少なくない。ベテラン人材コンサルがそのメカニズムを分析。
部下のモチベ、一面的に捉えていないか
前述のマネジメントの定義「会社から預けられた資源(人・モノ・お金・情報)をもとに、任された組織の成果の最大化を図ること」をしっかり理解すれば、マネジメントとして必要な行動をいま以上にたくさん挙げられるだろう。
そうすれば、これまでよりも効果的なマネジメントが期待でき、結果として組織成果の向上も期待できる。ただし、それはマネジメントの本質を課長がしっかりと理解していればという前提が付く。そうでなければ、マネジメントはきっと上滑りすることになるだろう。
課長が仕事上で関わる人は社内外に多くいるが、組織成果を上げるためには部下の存在なくしては成果もマネジメントも語れない。部下はとても重要な存在である。組織成果にとって、部下という資源はいつも安定的なパフォーマンスを発揮してくれる存在であるとは限らない。
同じ部下でも、高いパフォーマンスを発揮することもあれば、そうでないときもある。その差を生む要因は何か。一般に、パフォーマンスの低さについて部下本人に起因する要素としては知識やスキルの不足が考えられるが、もともと高いパフォーマンスをあげていた部下の場合、知識やスキルが急に失われたり、通用しなくなったりするとは考えにくい。多くの場合、それはモチベーションの低さが主な原因であろう。
では上司として、部下のモチベーションの低さに対して何ができるのか、何をすれば良いのか。「1on1をやっている」とか「話を聞くように心掛けている」「評価をできるだけ高くつけてあげられるようにしている」といった課長の行動は全て、上司として部下のモチベーションに配慮したものと映る。
モチベーションに関しては「人が働くモチベーションの源泉は給料(お金)である」とか「人は生活のために働いている」と、働く人のモチベーションを一面的にしか捉えていない課長も存在している。
ここ20数年間の国内景気を見れば、右肩上がりの持続的な成長は見込みづらい時代である。毎年給料がグングンと上がることは期待できない。とすれば「人が働くモチベーションの源泉は給料である」としか捉えていない課長は「私には部下のモチベーションを高めることはできません」と公言しているようなものである。
人は本当にお金のためだけに働いているのか。確かにそういった人は皆無とは言わない。一部には存在するのも事実であろう。しかしながら多くの人はそうではない。課長は、部下が本来持っている欲求を踏まえた上で、モチベーションを高めるようなマネジメントをする必要がある。
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