未だに「会うことしか考えていない」金融営業を変える お金のデザインが匿名でのお金の相談を始める理由(2/2 ページ)
お金の情報を得るに当たって、現実と理想のギャップが最も大きいのは「特定の業界に属さない中立的な団体から」。つまり、中立的なアドバイスを得たいと思っているのに、実際は商品を販売している金融機関からの情報に頼っているのが現状だ。匿名のまま適切な専門家に相談できる「お金の健康診断」を強化し、日本資産運用基盤と組んで、専門家をサポートするプラットフォームも提供する。
匿名で会わずに相談できる「お金の健康相談」
そこで「お金の健康相談」を強化する。ユーザーの漠然としたニーズに基づいて、適切な専門家とマッチングする仕組みだ。匿名のまま、悩みや収入、家族構成、資産状況などを入力すると、アルゴリズムから専門家とつなげる。チャットで悩みを相談し、具体的なやりとりをしたい場合は、連絡先などを明かして対面でのやりとりにつなげる。
「ほとんどのサービスでは氏名や電話番号などを入れさせるので、そのあと勧誘があるんじゃないかと不安になる。金融業界は、未だに会うことしか考えていない。会えばなんとかなると思っている。消費者が辟易していることに気づいていない。そこで、仮面をかぶったまま金融データを明かして、気軽に相談できるようにした」(中村氏)
すでに2万人がサービスを利用し、マッチングする先のIFAやFP、保険相談員など相談先も、40社、500人を超えた。
今後、金融事業プラットフォームを提供する日本資産運用基盤と組み、IFAやFPが適切なアドバイスを行える機能を提供していく。ポイントとなるのは、機械学習によるテキスト解析だ。チャット内容などを分析し、ユーザーのニーズを分かりやすく提示することで、アドバイザーの効率を上げていく。
ロボアドTHEOとの連携は、しばらく先
「お金の健康診断」のビジネスは、マッチング先である専門家から月額料金を取るモデルとなる。現状、ロボアドのTHEOとの関係はない。「現状ではマッチングのプラットフォーマーが商品を持つと利益相反が起きる」(中村氏)のがその理由。
具体的な金融商品を持っているところがアドバイス事業を行うと、どうしてもその金融商品をユーザーに勧めがちになる。それはユーザーが求めている、中立的なアドバイスを損なう。
将来的に、THEO内で複数の金融商品を取り扱えるようになっていった場合は、利益相反を起こすことなくシナジーを得られるという考えだ。実際、預かり資産が上位5社で17兆円を超えるロボアド先進国である米国では、ロボアドに人間による相談サービスを組み合わせることで、価値を強化してきた。
米チャールズ・シュワブのロボアド「Shwab Intelligent Advisory」では、2万5000ドル以上の運用をしている人に、人間のアドバイザーへの無制限の相談が可能。業界4位のベターメントの「Betterment Premium」では、手数料を多く払うと公認FPに相談でき、プレミアム以外でもチャットでの相談を可能にしている。
単なる資産の運用から、専門家に継続的にお金の相談ができる環境へ。急速に変化する金融業界で、有人アドバイスの価値が見直されようとしている。
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