組織を任せてはいけない人の「2つの特徴」(2/2 ページ)
組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方とは……。
もう一つの「チームワークを阻害する悪癖や態度」は、さまざまなことが思い浮かぶ。表情や姿勢や物腰や振る舞いなど、見ているとすぐ伝わるような不安定で不機嫌な態度。評価されたい、見て欲しいという気持ちの裏返しで幼稚な心理なのだろうが、メンバーや関係者の活力を低下させていく。語彙(ごい)の不足や思考力のなさがすぐにバレてしまう、あるいは、お里が知れるような話し方、話す内容、言葉の選び方。対話やディスカッションのイロハも知らないような、相手の否定と自己主張と不寛容。他者への関心が低いから、多様性に対する理解などもない。
どのような強みがあろうと、チームの中における適切な役割と、メンバーとのコラボレーションが、その強みを効果的に活用するための前提条件であり、このような悪癖と態度を持つ人は、自分の強みだけでなくメンバーの強みも殺してしまう。
そして、こういう人はいつか、自分の強みを評価してくれた上位者にばかり目が向くようになる。預かった組織の成果が上がらず、メンバーも育たず、自らの強みも発揮できなくなってくることによって、立場の危うさを感じるようになるからだ。そのストレスのはけ口が部下に向かうようになれば、メンバーもすぐに上しか見ていないヒラメと化していく。
「知的傲慢」と「チームワークを阻害する悪癖や態度」を持つ者の昇進は、これくらいリスキーである。社員の主体性や向上心のなさ、組織の硬直化や活力の低下、社内や部署間のコミュニケーションの不足、従業員の定着率の低さ、といった組織風土に関する悩みの尽きない会社も多いが、こう考えてくると知的傲慢や悪癖を持つ者をマネジャーにしてきてしまったのが一因かもしれない。
したがって、昇進の検討にあたっては、「知的傲慢がないこと」と「チームワークを阻害する悪癖や態度がないこと」をチェックするのが重要になるが、昇進の検討基準にするだけでなく、知的傲慢や悪癖を戒めるようなメッセージを経営が日常的に発しつづけるのも大切だ。知的傲慢や悪癖を持つ者は、そのことを自覚していないからである。
だから、評価基準にしてルールによって変えていくアプローチと、日常的なメッセージで空気から変えていくアプローチの両方が必要で、これを継続してようやく彼らは自らの状態を自覚できるようになるはずだ。彼らにとって必要な指導は、まず『知的な傲慢を矯正せよ』『悪癖や態度によって、チームワークを阻害してはならない』であり、そのような態度の修正ができて初めて『強みに集中せよ』が意味を持つのだろう。(川口 雅裕)
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