重度障害で寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」――親友の死、引きこもりの苦悩を乗り越えた吉藤オリィが描く「孤独にならない社会」:障害とは「テクノロジーの敗北」(2/5 ページ)
ロボットが接客して、注文を取り、コーヒーを運ぶ。それだけでなく客と雑談し、メールアドレスの交換もしている。東京・大手町でオープンした「分身ロボットカフェ DAWN ver.β2.0」でのことだ。ロボットを動かすのは遠く離れた場所で寝たきりで生活する、重い障害のある人をはじめとした外出困難な人たちで、2020年までの常設化を目指している。オリィ研究所所長の吉藤オリィさんに、分身ロボットカフェのプロジェクトが未来をどのように変えていくのか聞いた。
OriHime-Dの誕生は亡き親友のアイデアから
吉藤さんがOriHimeを最初に製作したのは2010年。24個のモーターがついた大型のものだった。その半年後にモーターが2個しかない小型のOriHimeを開発し、テレワークに活用していた。
OriHimeによるテレワークで、吉藤さんの秘書として働いていたのが、親友でもある番田雄太さんだった。番田さんは4歳で交通事故により頚椎を損傷。17年に亡くなるまで、28年の生涯の大半を寝たきりで過ごした。
盛岡から東京にいるOriHimeを動かして働いていた番田さんは、来客者を出迎えたり、見送ったり、お茶を運んだりなど、もっとやれることを増やしたいと考えていたという。16年のある日、2人で雑談するなかで「移動できるOriHimeを作ろう」というアイデアが浮かび、その日のうちにデザインを描き、模型を作った。それがOriHime-Dの原型となった.
「番田が秘書として働いて、給料をもらっていても、『それは番田さんだからできるんですよね』『オリィ研究所だからできるんですよね』と言われていました。確かに、特別支援学校に通う子どもたちがみんなテレワークで知的労働ができるかというと、まったく働いたことがなければ難しいですよね。それに生身の体がないと難しいコミュニケーションもたくさんあります。
では、みんなが働けて、雇用する側の企業も働くことがイメージしやすい仕事はどんなことだろうと考えました。そのときに番田と話したのは、動かない小型のOriHimeだと、他の人が客を社内に誘導して、奥にいる番田が『こんにちは』とあいさつする形になるので、これでは秘書の方が偉そうだなと(笑)。そこで玄関に客を迎えにいくことや、コーヒーを持っていくことができるようにしたいと考えたのが最初です」
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