重度障害で寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」――親友の死、引きこもりの苦悩を乗り越えた吉藤オリィが描く「孤独にならない社会」:障害とは「テクノロジーの敗北」(5/5 ページ)
ロボットが接客して、注文を取り、コーヒーを運ぶ。それだけでなく客と雑談し、メールアドレスの交換もしている。東京・大手町でオープンした「分身ロボットカフェ DAWN ver.β2.0」でのことだ。ロボットを動かすのは遠く離れた場所で寝たきりで生活する、重い障害のある人をはじめとした外出困難な人たちで、2020年までの常設化を目指している。オリィ研究所所長の吉藤オリィさんに、分身ロボットカフェのプロジェクトが未来をどのように変えていくのか聞いた。
障害とは「テクノロジーの敗北」
吉藤さんはOriHimeによって、重い障害のある人たちと一緒に働き、研究を進めることが、障害のない社会を実現することの近道になると考えている。
「障害とは何かというと、身体障害があるとか、障害者手帳を持っていることではありません。自分が何かをしたいと思ったときに、それをどうやっても越えることができない現代の壁が障害だと私は思っています。
そういう意味では距離も障害です。昔は大阪に住んでいる人が東京の家族に連絡を取るだけでも大変でした。それがいまは障害ではなくなっているわけですから、障害があることは、『テクノロジーの敗北』でもあるわけです。
私は障害のある人が普通に働けることを目指しているのではありません。そもそも普通は幻想です。いまの普通と5年後の普通は全く違います。だったら寝たきりを一つの価値として捉えて、OriHimeや車椅子などいろいろな機器を、障害のない人にもうらやましいと思われるものにしたい。普通に追い付くのではなく、普通をつくることをこれからも目指していきます」
今回オープンした分身ロボットカフェには、クラウドファンディングで1000万円を超える支援が寄せられた。複数のスポンサー企業もあらわれ、パイロットがOriHimeやOriHime-Dで働く場も広がっている。吉藤さんは常設化に向けて支援を呼びかけながら、さらなる進化を目指して研究を続け、思い描いている未来を着実に現実へと近づけている。
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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