それでも“IT武装”する? Excelだけで、だいたいのマネジメントはうまくいく:「見える化」「パターン分析」、本当に必要?(3/4 ページ)
「業務改革」と切っても切れない関係にあるITツール。「取りあえず」と導入を検討する企業も多いのでは。しかし、ケースによってはITツールを使わず、Excelだけで十分なときもあるのだという。中には過剰なまでに“IT武装”をしてしまい、機能不全に陥る場合も。経営コンサルタントの横山信弘氏が斬る。
社長の「カンピュータ」の方が使われる悲劇
算式といっても、四則計算ができれば十分。つまり、必要なのは足し算、引き算、掛け算、割り算の4つのみ。例えば、自己資本利益率(ROE)や生産性は「割り算」で、客単価は「掛け算」、利益は「引き算」で導くことができる。
それ以外の複雑な計算でたどりつく指標だと、算式が頭に入らない。算式が頭に入らないということは、その根拠が分からなくなるということだから、人間はその指標の「値」を信じられなくなるし、いずれ使わなくなる。
意思決定に役立つと思い、「BI(ビジネスインテリジェンス)ツール」などの情報システムを導入しても、多くの企業はだいたい最初だけしか使わない。そうなると結局は、「勘」頼みのマネジメントに後戻りする。
「あのさあ、年末になって意欲的になるヤツほど、営業成績が安定しないもんだ。調べてみろ、第2課の高橋なんて、まさにそうだろ。最近、やたらと威勢がいいんだよ。春からあの調子でやれって言いたいよ、俺は」
こうしたマネジャーの感覚や勘、つまり「コンピュータ」ならぬ「“カン”ピュータ」の方が実際に使われてしまうのだ。
縦横の2軸から仮説を立てる
例に出した営業マネジメントについて、考えてみたい。
営業の活動をプロセスごとに分解し、それぞれの量を測るのに高度なツールは要らない。トーク技術のレベルも、しかるべきマネジャーがテストを繰り返し、5段階ぐらいで採点すれば事足りる。
それら行動の量とスキルの伸び具合を時系列で追っていけば、「意欲」のレベルも5段階ぐらいで分類できるのだ。そして、縦の軸を営業社員の「行動」、横の軸を「意欲」にして、分布図を作ればいい。そうすれば、どの行動プロセスと意欲が関連あるか、探っていくことができるだろう。縦軸を「営業成績」、横軸を「意欲」にしたり、「社歴」と「意欲」や「年齢」と「意欲」などに変えてみたりすると、それらの相関関係が分かるはずだ。
もっと細かく見てもいいだろう。「決裁者に対する商談」の量と「意欲」の関係はどうだとか。そこに「営業成績」という切り口を加えるとどうだとか。つまり、縦軸と横軸の切り口を変えるだけで、問題の箇所が分かってくるはずだ。問題の箇所が特定できれば、その問題をどうすべきかを都度考えればいい。
細かいデータは、営業社員や、そのアシスタントが日々蓄積すればいいだけだから、Excelの基本機能だけで事足りる。よほどのことがない限り、関数やピボットテーブルなども使う必要はない。
2000円も出せばExcelの解説書ぐらいすぐ手に入るし、朝から夕方までしっかり時間をとり、アレコレ手を動かせば、シンプルなマネジメントツールはいくつか出来上がる。そして翌日には運用段階に入ることができるだろう。
関連記事
- 課長の平均年収は932万円、部長は? 外資との「格差」も明らかに
日本で活動する企業の報酬状況が発表。日系企業と外資系企業合わせて679社が参加した。調査結果では課長職や部長職の平均年収も明らかになった。日系企業と外資系企業の報酬格差も合わせて発表し、特に役職者以上で顕著な開きがあった。 - 忘年会、スルーしたいのは若者だけではない! 「同一飲食同一支払」を求める管理職の悲痛な叫び
SNSで話題の「忘年会スルー」。「高いお金を払ってわざわざ上司の自慢話に付き合いたくない」という若年層のコメントが目立つ。一方で、管理職の方でもスルーしたい人が増えているのだとか。スルーしたいのは管理職も同じ?経営コンサルタントの横山信弘氏が斬る。 - 満員電車にNO! 優雅に座ってバス通勤、広がる? 朝食付きサービスも
ビジネスパーソンの悩みの種「満員電車」。テレワークやフレックス制度の導入でやや緩和しているが、まだまだ朝夕の混雑は激しい。そんな中、郊外などから都心へ向かう優雅なサービスが出始めた。中には朝食、コーヒー付きのものも……。 - ワタミはもう、「ブラック企業」には戻らない そう考えるこれだけの理由
創業者である渡邉美樹氏が10月1日、ワタミに復帰。復帰会見では離職率の低下など、「ホワイト企業化」が宣言された。「ブラック企業」と批判され続けてきたワタミだが、本当に環境はよくなったのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏が3回にわたり、ワタミの過去を振り返るとともに現状を検証する。 - 一風堂が「ラーメン1杯でビール最大5杯無料」を急に変更 ドタバタ劇の裏側
一風堂がラーメンを注文するとビールがサービスされるキャンペーンを展開。8月19日から開始したが、開始翌日にキャンペーン内容を急遽変更。お客が殺到したことが理由とのことだが、どれくらいの反響があったのか? - 同一労働同一賃金がまだまだ日本で浸透しない、これだけの理由
2020年から開始する「同一労働同一賃金」。期待を集める一方で、“真”の意味で浸透していくにはまだまだハードルがありそうだ。どういったところに課題があるのか。しゅふJOB総研所長を務め、労働問題に詳しい川上敬太郎氏が斬る
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.