抵抗勢力は30代 オフィス改革“断行”の内田洋行が達成したこれだけのコスト削減:失敗の繰り返しから得た「果実」(4/4 ページ)
内田洋行は10年前のオフィス移転を機に最も働きやすい環境を考え、実証実験を重ねてきた。書類の保管スペースを費用換算で1800万円の削減、会議室利用の効率化のために独自システムを開発し、同じく1000万円を減らすことができた。その成果を顧客向けサービスや商品の開発にもつなげている。社内の「抵抗勢力」の反対もありながら、いかに生産性の高い働き方を実践してきたのか――。
生産性の低い作業は極限まで少なくする
ミーティングをする場所を探す時間、書類を探す時間、会議始まりの機器のセッティングにかかる数分。これは仕事本来の生産性を高めるためには極力少なくしたいロスタイムだ。同社で導入しているのはPCにケーブルをつながずにプロジェクターに映し出せるワイヤレス投影システムだ。
「ケーブルを使うとどうしても発表者の位置が限定される。発表者交代のときにケーブルを外してつなぐ行為によってロスタイムが生じたり話の流れが途切れたりする」(橋本氏)。社内ミーティングでは基本的にケーブルを使わず、ワイヤレスによって投影することが徹底されているという。
さらにワンタッチで1つのスクリーンのなかに、複数の端末画面を分割して表示できる機器も取り入れている。こうすることで「従来よりも多様な意見が出やすく、タイムリーに情報を共有しやすい」(橋本氏)。
会議が長引いてしまう要因としてその会議の目的があいまいだったり、議事進行の流れがどうなっているのか意識していなかったりすることも多い。こういう場合はスクリーンを2枚使って片方に議事進行内容、片方にプロジェクトや企画内容を同時に映すことによって、全員に会議の流れと決めるべきことを共有できる。片方で議事録を入力する画面を映し、片方でコンテンツ共有することもしている。
会議前にありがちな、AV機器の操作が分からず浪費してしまう時間をなくそうと、タブレットを1回タップするだけで遠隔地を結ぶテレビ会議やプロジェクター設定ができるクラウド型会議支援システム「MeeTap」 も開発した。さらに同社では予約を必要としないミーティングコーナーが空いているか確認する手間を短縮するために、赤外線センサーをつけて使用状況が分かるシステムも開発中で、現在社内で検証運用している。
以上が同社の取り組みだ。働き方改革への対応が迫られる企業が多いなかで、時短やフリーアドレスといった形から入って思うような成果があげられていない事例もよく聞かれる。施策を導入する前に、導入したことによって自社の業務フローをどのように変えたいのか、いったん立ち止まって検討することが、今後ますます必要とされるだろう。内田洋行の実例はその1つのヒントだ。
著者プロフィール
成相裕幸(なりあい ひろゆき)
フリーライター。1984年福島県いわき市生まれ。明治大学文学部卒業。出版業界紙「新文化」記者、『週刊エコノミスト』編集部を経てフリーランスに。
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